相続の基礎知識
どなたかが亡くなって、その方に財産(負債も含む)がある場合相続が問題となります。
遺言がある場合は別ですが、そうでなければ以下のような原則に従うことになります。
なお、以下はあくまでも原則であり、全ての相続人が合意の上で以下と異なる遺産分割をすることも可能です。
1 相続の開始
相続が開始するのは、人が死亡した時です。
例外的に、失踪宣告によって相続が開始します。
失踪宣告とは、行方不明になってから7年(事情によっては1年)経過し、裁判所が認めた場合に死亡と同じ扱いがされる制度です。
2 相続人
原則として、亡くなった方の配偶者と、亡くなった方の血のつながりがある中で1番近い関係にある方が相続人となります。
具体的には次の順に相続します。
①配偶者と子供(子供が先になくなっているなどの場合は孫などの代襲相続人)
②子供がいない場合は、配偶者と親(親が先になくなっていて祖父母がいる場合は祖父母などの直系尊属)
③子供も親もいない場合は、配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹が先になくなっている場合は、兄弟姉妹の子)
以上が原則ですが、一定の場合には相続欠格や相続の排除という制度によって、上記の方でも相続権がなくなることがあります。
逆に、相続放棄等の手続により、相続人の意思で相続しないことも可能です。
3 相続割合
こちらも遺言がある場合には、原則としてそれに従うことになりますが、遺言がなければ次の割合(「法定相続分」といいます)となります。
①配偶者と子供が相続人の場合
配偶者2分の1、子供2分の1
各子供達の相続割合は、2分の1を子供の人数で割った割合となります(兄弟2人なら、それぞれ4分の1)。
なお、非嫡出子の相続割合について平成25年に法改正がされて、嫡出子と平等となったことに注意してください。
②配偶者と親が相続人の場合
配偶者3分の2、親3分の1
親が複数いる場合は、3分の1をその人数で割ることになります。
③配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者が4分の3、兄弟姉妹4分の1
兄弟姉妹が複数いる場合は、原則としてその人数で割ることになりますが、異母兄弟・異父兄弟のように血縁関係が半分の場合は、父母共に同じ兄弟の相続分の半分となります。
例えば、亡くなった方と父母共に同じ兄と、相続人とは異母の弟がいたとします。
この場合、兄と弟の相続割合は2:1、つまり、兄が3分の2、弟が3分の1となります。
亡くなった方に配偶者がいる場合は、兄弟姉妹の相続割合は4分の1ですから、兄の相続割合は1/4×2/3=2/12、弟は1/4×1/3=1/12となります。
以上が原則的な相続割合となりますが、生前贈与や遺贈、相続人の中に亡くなった方の財産形成に寄与した方がおり寄与分が認められる場合には修正されることになります。
4 相続した時期によって適用される法律が異なります
上記は、現在の民法の取扱いです。
法は、相続に関する規定を数回にわたり改正しているため、相続した時期によっては上記説明と異なる場合があります。
具体的には、以下の時期を基準として異なるため、亡くなってから時間が経つ方の相続が問題となっている場合は、個別にご相談ください。
・~昭和22年5月2日:旧民法の適用があり家督相続制度などが残存
・昭和22年5月3日~:新民法への移行に伴う特別法
・昭和23年1月1日~:家督相続制度の廃止、長子相続から子供達の相続分の平等化等の改正
・昭和37年7月1日~:相続放棄や失踪に関する規定の改正、特別縁故者に関する規定の新設等
・昭和56年1月1日~:配偶者の相続割合の変更、寄与分の新設等
・平成12年4月1日:聴覚・言語障害者の公正証書遺言に関する改正、成年後見制度の開始等
・平成25年9月5日:嫡出子と非嫡出子の相続割合を平等化(最高裁判決は平成13年時点で違憲としているため、平成25年以前の相続にも適用される可能性がある)
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。