宝石や時計などは財産分与の対象となるか?
離婚時の財産分与において、時計や宝石などが財産分与の対象になるか争われることがあります。
通常は、時計や宝石は、夫婦で共有することはなく、どちらか専用のものとして購入しますが、このような、夫婦どちらか一方だけが使うことを想定して購入したものを専用財産といいます。
そして、専用財産は、原則として財産分与の対象とはなりません。
もっとも、この原則どおりでは不公平が生じる場合があります。
たとえば、夫は、中古価格でも1本500万円のパテックフィリップの時計を持っているのに、その他の財産は300万円しかないといった場合、時計は夫の専用財産だから財産分与の対象外とすると、高いものを買ったもの勝ちになってしまいます。
このように、専用財産であっても、相当な価値があり、それを財産分与の対象外としたのでは不公平が生じる場合には、財産分与の対象とされることがあります。
では、具体的に、いくらくらいから財産分与の対象になるかですが、客観的な価値や夫婦の財産状況、お互いの専用財産の内容を総合考慮して決まるため、明確な基準はありません。
上記のように、500万円の時計ですと、一般的な経済的感覚からすれば、非常に高額なので財産分与の対象になりやすくなります。
ましてや、その他の財産が300万円しかないとなると、ほぼ確実に財産分与の対象となるでしょう。
ですが、たとえ500万円の時計を持っていても、その他の財産が10億円あるとなると、財産分与の対象とならない可能性があります。
また、夫が500万円の時計を持っていても、妻もハリーウィンストンの500万の宝石を持っているとなると、お互い様ということで、財産分与の対象外とされる可能性があります。
上記は極端な例ですが、裁判例を見ても、数十万の時計でも夫婦共有財産とされているものもあれば、100万円以上のものでも財産分与の対象外とされているものがあります。
もちろん、上記のような時計や宝石以外のもの、たとえば、プレミア価格500万円のミニカーなど、趣味のものでも婚姻後に購入したものであれば、上記と同様に考えます。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。