不倫夫からの離婚訴訟と不倫相手への慰謝料請求は一緒に裁判できる?
夫が不倫をしたので夫に対する離婚訴訟を起こし、同じ手続きで不倫相手に慰謝料を請求するということはよくあります。
では、不倫をした夫の方から離婚訴訟を起こされたけれど、離婚を拒否し、でも不倫相手は許せないので、慰謝料を請求したいという場合、離婚裁判の手続内で不倫相手への慰謝料請求を判断してもらえるのでしょうか?
この点について、最高裁判所は、夫が有責配偶者(離婚原因を作った方)だから離婚請求は認められないとして争っている場合でも、離婚裁判手続きと一緒の手続きで不倫相手への慰謝料請求ができるとしました(最高裁判所平成31年2月12日決定)。
なぜこんなことが争いになるのかというと、原則として離婚訴訟は家庭裁判所の取り扱い、慰謝料請求は地方裁判所の取り扱いとなっており、例外的に離婚裁判の原因となる事実と共通の原因で慰謝料を請求する場合は、慰謝料請求を家庭裁判所でできると法律に書かれているからです。
冒頭に書いたように、浮気をした夫を相手に離婚訴訟を起こして、その訴訟と一緒に不倫相手への慰謝料請求は、離婚原因となる夫の不倫と、慰謝料の原因となる不貞相手と夫の不倫は共通するので、一つの手続きで可能です。
今回の最高裁決定は、不倫をした夫からの離婚訴訟に対し、妻が、不倫をした方からの離婚請求は認められないとして争う場合、不倫の有無が離婚訴訟の際の争点として争われるのだから、同じ不倫を原因とする不倫相手への慰謝料請求も一緒に裁判してよいとの判断です。
面白い(と言っては当事者に失礼ですが)のは、今回の争いでは、妻が地方裁判所に対して不倫相手への慰謝料請求訴訟を提起したところ、地方裁判所が、家庭裁判所でやっている離婚訴訟と一緒にやりなさいという決定を出し、妻が、別々にやりたいと不服申し立てをしたということです。
判決文からは、妻がなぜ最高裁まで争ってまで離婚と別々の手続きでやりたかったかは分かりませんが、実際に裁判をしていると、法律上は一括で解決できるけれども、別にやりたいというケースはあります。
裁判所は、なかなか理解を示してくれないのですが・・・
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。