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裁判所は、長期間の別居がある場合には裁判上の離婚を認めていますが、単身赴任の期間を別居と考えて、長期間の別居を理由に離婚ができないのかと質問を受けることがあります。
結論としては、原則として単身赴任は離婚のための別居期間とならないけれど、裁判官の心証レベルで考慮されるといっていいでしょう。
この点について説明する前提として、法律上認められる離婚理由について説明します。
現在の裁判所の考え方は、裁判で離婚が認められるのは、夫婦関係が破綻(はたん)している場合だとの考えです。
離婚原因の典型例である不貞行為(浮気)も、一方が不貞をして、相手がそれを許せないなら夫婦としてやっていくことはできないといえるので、夫婦関係が破綻していると判断され、離婚原因になります。
今回問題となる長期間の別居を理由とする離婚においても、長期間の別居をするということは、夫婦として実態がないから、婚姻関係は破綻していると考えます。
この考え方からすれば、単身赴任は、仕事上の都合で離れて生活しているだけで、相手の生活費等を負担しており、かつ、家族としての交流もあることから、夫婦関係が破綻していること(夫婦としての実態がないこと)を基礎づける事実としての別居には当たらないということになります。
では、単身赴任から離婚理由となる別居に切り替える方法はないのでしょうか?
上記のように、単身赴任が離婚理由としての別居に当たらないのは、夫婦としての協力関係があるからなので、協力関係を断ち切る行為があれば、単身赴任から離婚を基礎づける別居に変わります。
具体的には、相手から離婚の申し入れがあったような場合は、離婚の申し入れ時点から、離婚を基礎づける別居が始まったと認定されます(夫婦喧嘩で言いすぎてしまったというのは除きます)。
実際、裁判例でも、単身赴任中に不仲となり離婚訴訟に至ったケースで、単身赴任中である相手が帰宅することを拒否した時点を別居の開始とする、としているものがあります。
理屈からいえば、これで完結するはずなのですが、裁判例を見ていると、同じく単身赴任から離婚訴訟に至ったケースの判決理由中で、「実質的に同居したのは●年だけである」などと書かれていたりするので、裁判官は、単身赴任は別居ではないものの、同居している場合と比べて夫婦の親密度合が低いと考えているのではないかと思います。
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