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不貞慰謝料の請求相手と支払ったあとの内部関係

相手の浮気(不貞、不倫)が原因で慰謝料を請求する場合、浮気をした夫(妻)への損害賠償と浮気相手への損害賠償は別々に請求できるでしょうか?

別々に請求できるとした場合、それぞれへの請求金額や、一方のみが支払った場合の夫(妻)と不貞相手の金銭関係はどうなるでしょうか?

1 不貞慰謝料に関する浮気夫(妻)と浮気相手の法律関係

まず、そもそも浮気した夫(妻)と浮気相手は、損害賠償という観点からどのような関係に立つかについては、民法719条1項に定められています。

民法719条1項
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。

連帯してその損害を賠償する責任を負うとは、お金を借りる場面を想像すると分かりやすいかもしれません。

たとえば、夫婦二人で共同でお金を借りた場合、夫婦二人ともが貸主に対し責任を負い、貸主は夫婦のどちらか一方に請求してもよいし、それぞれに金額を振り分けて請求してもかまいません。
お金を借りた夫婦の方も、どちらかがお金を払えば良く、必ず半々で払わなければならないというわけではありません。

不貞慰謝料における浮気夫(妻)と浮気相手も、2人で協力して1つの不貞行為とを行ったのだから、損害としては一つで、請求者は、1人が全額支払うよう請求してもよいし、それぞれ分担して支払うように請求してもよいということになります。

なお、これを不真正連帯債務(本来(真正)の連帯債務とはちょっと違うけど連帯債務の一種ですという意味)といいます。

2 浮気夫(妻)と浮気相手の金銭関係

請求者である妻(夫)と支払義務を負う2人の関係は上記のとおりですが、支払い義務を負う2人の関係はどうなるでしょうか?

この点については、請求者との関係では、2人とも全額を支払う義務を負いますが、2人の間では、それぞれがその責任割合に応じて支払義務を負うので、自分の責任以上の金額を支払った方は、もう一方に対して、その責任に応じた支払を求めることができます。

これを求償権(きゅうしょうけん)といいます(民法442条1項)。

ただし、求償できるのは、あくまでも自分の負担部分を超えた部分のみとなります。

3 具体例

夫をA、妻をB、妻の不倫相手をCとします。

BとCが不倫関係に至ったのは、とくにどちらか一方の強引な誘いとは認定できないので、50%ずつの責任であるとします。

このケースで、AがCに損害賠償(不貞慰謝料)を請求し、損害額が100万円という判決が出たとします。

そして、CがAに100万円の支払いをすると、Cは、その責任割合、すなわち、半額の50万円をBに請求することができます。

しかし、たとえばC50万円しか支払わなかったような場合には、Bに半額の50万円を請求することはできませんし、残りはBが支払うべきという主張もとおりません。

4 現実的問題

⑴ 示談で高額の慰謝料を請求した場合

上記のように、判決で損害額が決まった場合はいいのですが、実際には示談で済ませることが多くあります。

その場合、慰謝料は、お金の貸し借りと違って、明確な金額がないため、いったいいくら払ったら求償できるのかが問題となります。

たとえば、裁判はしたくないので、Cが示談交渉で500万円を支払ったとします。

この場合、CはBに対して250万円を請求できるかというと、250万円がてきせいきんがくかどうかわからないので、Bが支払いを拒否した場合には、裁判をして適正金額が決まるまで請求はできないことになります。

⑵ BもCも相手が支払ったと知らずにAからの請求額満額を支払った場合

求償問題で、もう一つ問題になるのは、BがAに200万円支払ってCに求償しようとしたところ、CもAに200万円支払っていたというケースです。

このような場合については、民法443条に規定があります。

同条は、事前に連絡せずに支払ったときに、求償相手も払っていた場合には、求償することはできないと定めています。

上記のケースだと、Cに連絡をせずに支払ったBは、Cから「私も支払ったんだから、支払う義務はない」といわれたら、Cには半額負担を求めることはできなくなるということです。

こういう処理だとAがBからもCからも損害賠償を得て、二重取りになるからおかしいのではないかと思うかもしれません。

この問題については、理論上、BがAに対して、「支払いすぎたから返せ」ということができます(不当利得返還請求)。

もっとも、不倫慰謝料を支払いすぎたので返せという訴訟をする人はいないようで、裁判例は見つけられませんでした。

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