面会交流の間接強制申立て後に新たな面会交流審判がなされた場合
面会交流について取り決めたのに相手が約束通り会わせてくれないから間接強制の申立てをしたら、相手が面会交流条件の変更を求める調停を起こしてきて、間接強制の判断より先に再度の面会交流条件に関する判断がされ、最初の面会交流条件と異なる内容となった。このような場合、間接強制の申立てはどうなるでしょうか?
このことについての東京高等裁判所の決定をご紹介します。
なお、間接強制とは、面会の合意に反するたびに一定の金額を支払いを命じる、いわば罰金のようなものです。
決定文では、監護親(子どもと一緒に暮らす方)、非監護親とのみ表記してあり、どちらが父親か母親かは分からないので、見慣れない言葉でわかりにくいかもしれませんが、裁判例のまま「監護親」、「非監護親」と表記します。
1 事案の概要
・2011年6月 結婚、子2人をもうける
・面会交流調停成立
・2017年1月 和解離婚
・2018年7月20日 面会交流の条件を変更する東京高裁の審判に代わる決定(2018年決定)
・2021年 非監護親が監護親を相手方として間接強制の申立て(面会不履行1回につき、1人あたり10万円の支払いなどを求める)
・2022年4月1日 甲府家庭裁判所が面会不履行1回につき3万円の支払いを命じる決定。監護親が東京高裁へ不服申し立て
・2022年9月16日 面会交流の条件を再度変更する東京高裁決定が確定(2022年決定)
・2023年1月17日 東京高裁による間接強制の申立てについての決定(本決定)
2 東京高等裁判所令和5年1月17日決定
結論:2022年9月15日以前の面会交流の実施等を求める部分については、相手方と未成年者らとを面会交流させなければならない旨命ずるとともに、その不履行1回につき3万円の支払いを命じ、2022年9月16日以降の面会交流の実施等を求める部分については、これを却下すべきものと判断する
理由:2018年決定が命じていた相手方と未成年者らとの面会交流の実施等のうち2022年9月16日以降の実施等に係る部分については、2022年決定の確定により執行したことが明らかである。そうすると、抗告人は、もはや平成30年決定の上記部分を債務名義とする強制執行(間接強制)を求めることはできないというべきであるから、本件申立てのうち、2022年9月16日以降の面会交流の実施等を求める部分については、不適法である。
3 コメント
同じ事柄について新しい決定がでたので、古い決定は効力を失う。
古い決定に基づく間接強制の申立ては、古い決定が効力を失ったので不適法で却下するという、法律的には、ごく普通の決定だと考えます。
ただ、一般的な民事事件(お金の貸し借りなど)では、強制執行申立て中に同一の事柄について前回と異なった別の判決が出ることはありえないので問題はないのですが、面会交流は、時間の経過とともに親同士の関係、親子の関係、子供の意思や成長などに変化が見られ、面会交流条件の見直しがなされることがあります。
そうすると、非監護親は、面会交流条件の変更のたびに間接強制を新たに申立てなければならないということになります。
このような手続きはかなり面倒ですので、面会交流に関しては、その特殊性に応じた立法的解決を図る必要があるように思います。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。