養育費は離婚したあとで請求することも出来ます
早く離婚したかったので、養育費について取り決めずに離婚しました。
でも、やっぱり養育費を請求したいんですが、できますか?
そんな相談を受けることがありますが、できます!
以下、詳しく説明します。
1 離婚時に合意がなくても養育費を請求できる理由
養育費は、子供を育てるための費用です。
これは、日々発生するものです。
つまり、毎日、養育費は発生し、同時に請求権が発生するということになります。
ですから、離婚から何年たっても、子育てに費用がかかる限り、いつでも養育費を請求できるということになります。
2 過去の養育費は請求できるか
離婚してしばらくしてから養育費を請求したいという場合、これまでの分の養育費をもらえないかとのご相談を受けることがあります。
これは、離婚時に養育費の合意があったけれども事実上支払いがないのか、養育費の合意自体がないのかによります。
離婚時に養育費の合意があったけれど、事実上支払がないという場合は、過去の養育費の請求ができます。
ただし、養育費は請求できるときから5年で時効になります。
ですから、毎月●円というないようで養育費を決めていた場合、5年後から毎月1か月分ずつ時効になっていくので、遅くとも合意から5年以内に請求してください。
次に、離婚時に養育費の合意がない場合ですが、この場合は、原則として過去の養育費は請求できません。
裁判例上、養育費は、請求したときから発生するとされているためです
この場合の請求したときとは、調停を申立てたときとされるのが一般的です。
例外的に内容証明郵便で明確な金額を請求したときとしている裁判例もありますが、認められない可能性もあるので、確実な基準時として調停を申し立てましょう。
3 養育費の金額
養育費の金額は、お互いの収入を裁判所が公表している養育費算定表に当てはめて算出します。
算定表の左側に支払う方の税引き前の総収入を当てはめ、下に請求する側がの総収入を当てはめます。
両者の交差するところが適正な養育費となりますが、これはあくまで基本の養育費です。
具体的な事情によって変わることがあるので、修正理由がないか、こちらのコラム目次のページでご確認ください。
4 養育費請求の流れ
離婚後に養育費を請求する方法には次の3つがあります。
① 交渉
② 調停
③ 審判
① 交渉で解決する
離婚後に、あらため支払うよう支払うよう通知し、交渉で養育費を取り決めることは可能です。
この方法のメリットは、法律上は請求できない過去の養育費についても、相手方に親としての責任感があれば請求できる可能性があることです。
交渉で養育費支払の合意ができたら、必ず公正証書にしましょう。
私的な合意書だけですと、相手が支払わなかった場合、裁判をして判決をもらい、判決に基づいて相手の給料などを差し押さえることになります。
しかし、公正証書があれば、公正証書に基づいて相手の給与を差し押さえることができます。
② 調停で養育費を請求する
交渉で解決出来ない場合は、裁判所に養育費支払請求調停を申立てましょう。
ただし、調停は、調停委員という裁判所の臨時職員が間に入ってくれますが、性質としては、場所が裁判所というだけの単なる話し合いですから、相手が納得しなければ養育費は決まりません。
その場合は、次に説明する審判に進みます。
なお、調停で合意ができた場合は、調停調書という書類を裁判所が作ってくれます。
この調停調書は、判決と同じ効果を持つので、相手が支払わない場合には、給与などを差し押さえることができます。
③ 審判で養育費を請求する
調停で養育費が決まらない場合は、審判で養育費を決めることになります。
審判へは、調停が成立しないことが決まると、自動的に移行します。
審判は、家庭内のもめごとなど、公開の法廷で審理することが適さない争いについて、非公開で行う簡易な裁判と考えてください。
審判では、裁判と同じように、双方が根拠となる資料を出し合い、裁判官が適切な養育費を判断します。
ある程度資料が出た段階で、裁判官が和解を促すことがあります。
和解ができる場合は、裁判官が職権で調停に戻し、調停成立という形にします。
なお、調停を飛ばして養育費支払い請求審判を申立てることも可能ですが、通常は、裁判官が職権で調停に戻し、そこから調停の日程調整をして、という手続きになるので、どうしても調停ができない事情がない限りは、調停を申立てた方が時間の無駄にならずにすみます。
5 養育費の請求を弁護士に依頼するメリット・デメリットと費用
養育費の請求を弁護士に相談する最大のメリットは、養育費算定表の金額に例外的に加算する事情がある場合です。
ですから、依頼するかどうかはともかく、とりあえずは離婚に詳しい弁護士に相談しましょう。
その結果、養育費の算定でとくに争いになりそうなことがないということであれば、ご自身で交渉、調停、審判を行っても不利になることはないでしょう。
ご不安があるようでしたら、疑問点や不安点があるたびに、個別に相談という対応でよいと思います。
もちろん、自分で請求するのは不安だとか、相手と連絡を取りたくないので間に入ってほしいという場合は、ご依頼いただければ弁護士が代わりに交渉します。
弁護士に依頼する最大のデメリットは、やはり弁護費用です。
弁護費用は、各弁護士事務所によって違うので、相談する事務所に確認しましょう。
一見安そうでも、よく考えると高い場合もありますし、安かろう悪かろうという場合もあります。
もちろん、高い弁護費用だから弁護士として優秀という訳でもありません。
実際に会って相談してみて、良いと思う弁護士にご依頼ください。
【関連コラム】
・養育費の計算|2019年12月改定対応
・コラム目次ー男女問題を争点ごとに詳しく解説-
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。