中学生の面会交流の判断は裁判官によって異なるが、結果的には大差がない
面会交流調停・審判の際に、「子供が嫌がっているから会わせない」という主張がされることが多くあります。
現在の裁判所の取り扱いでは、「子供が嫌がっている」だけでは、面会拒否理由としては認められません。
*最近は、「子供が嫌がっている」だけで面会を認めないという判断が増え、傾向が変わっています(2021.8.26加筆)。
子供が嫌がっているとすれば、その原因が何かまで掘り下げて、面会交流を認めない合理的理由があるかどうかが判断されます。
現実的にも、「子供が嫌がっている」だけで面会拒否が認められると、言った者勝ちになってしまいますから、原則としては妥当な取り扱いだと考えます。
問題は、具体的な実現方法と子供の年齢です。
子供が小さいうちは、たとえば「相手方は、申立人に対し、月1回、3時間、子供と面会交流させよ」といった内容の調停条項でも、それほど大きな問題とならないことが多いですが、
中学生くらいになってくると、面会拒否の理由に合理性があろうとなかろうと、子供が嫌だと言っているのに無理やり会わせることはできません。
そのような場合、監護親側の依頼を受けると、「相手方は、申立人と子の面会交流を妨げない」という条項ではどうかという提案をし、これで合意がされることもあります。
しかし、面会できないのは監護親のせいだと思い込んでいる非監護親側から、こんな条項だと意味がない、具体的な面会条項としたいと主張されることもあります。
その結果、調停から審判へ移行したケースで、途中で裁判官が転勤で変わるという事例がありました。
その際の裁判官の対応があまりに違ったのでご紹介します。
最初の裁判官は、「中学生が会いたくないって言っているのに、会わせるのは無理でしょ」という意見でした。
しかし、次の裁判官は、「子供が嫌だと言っているだけでは面会拒否理由にはならない」という意見で、
こちらが、「会わせないとは言っていないが強制することは物理的にできないので、「面会を妨げない」という条項なら応じる」と主張しても、「子供に会わせる義務がある」と言い続けました。
当然、裁判官がこのようなことを言うと、非監護親側は自身の主張が認められると考え、さらに一歩踏み込んで「間接強制ができるような具体的な条項を求める」と主張してきます。
しかし、二番目の裁判官もさすがに無理があると考えたようで、「間接強制が可能な内容の文言にはしません」との意見でした。
つまり、たとえ非監護親側が主張するような、相手方は子供に合わせろタイプの審判となったとしても、強制できないという結論になります。
では、結論は同じじゃないかと思うかもしれませんが、ちょっとだけ違います。
理論的には、後者の場合は、子供に会わせないことが違法になるので損害賠償請求が可能です。
もっとも、合理的理由があれば違法ではなくなるので、子供が絶対会いたくないと言っているような証拠があれば、中学生を無理やり合わせるのは無理だから合理性があるという結論になるでしょう。
つまり、「本当に子供が面会を嫌がっているのであれば」という条件付きで結論は同じです。
このように、非常に不毛な争いをすることになりますし、子供たちは、自分たちが会いたくないと言っているのに、会えと命じた裁判所や、会わせなかったことに対する損害賠償を請求する非監護親にますます不信感を抱くことになりかねないので、ある程度大きな子に対する面会交流に関しては、法的手段を使った面会交流の強制が手段として本当に良いのか、よく考えた方が良いでしょう。
なお、上記は、本当に子供たちが嫌がっている事案でしたが、なかには「子らが非監護親を拒否しているのは監護親の強い影響が認められる」との調査官調査の結果もあり、そのような場合には審判で監護親に対し子供たちの誤解を解く努力を命じることもあります。
【関連コラム】
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・コラム目次ー男女問題を争点ごとに詳しく解説-
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。