婚姻費用分担請求調停に相手方が来ないときの調停の流れ
相手が生活費を支払ってくれないから婚姻費用分担請求調停を申立てたけれども、相手が家庭裁判所からの予備だ出しを無視して調停に出席しないという場合があります。
その場合に、裁判所がどういう対応をするかについて、裁判官や裁判所調査官、調停委員らが書いた記事を掲載するケース研究という本にまとめられていたので、当職の経験からの意見を補足しつつご紹介します(「ケース研究333号」公益財団法人日本調停協会連合会)。
1 1回目の調停を欠席した場合
⑴ 欠席すると連絡があった場合
調停期日は、原則として相手の都合を聞かずに設定しているので、相手方から欠席の連絡があった場合には、単に相手方の主張を聞く期日が次回に延期されるだけです。
なお、東京家裁では、相手方欠席の場合でも、申立人の主張の聞き取りが行われますが、裁判所によっては、1回目の期日自体を延期してしまい、延期した期日で双方の聞き取りを行う場合もあります。
人間の記憶は、最初に聞いたことが印象に残りやすいことからすれば、なるべくすぐに反論の機会を設ける後者の方が適切だと思いますし、前者だと話が進まないのに、申立人は1回仕事を休んで裁判所に行ったりしないといけないので、是非とも後者の運用で行っていただきたいものです。
⑵ 何の連絡もなく欠席した場合
相手方が何の連絡もなく欠席した場合は、調停委員が、申立人に対して、事前に相手方が調停について何か言っていなかったかや、相手方の生活状況はどんなものか、相手方は出席しそうか、携帯番号などの連絡が取りやすい方法はあるか、といったことが聞かれます。
その後、裁判所から相手方に何度か連絡を試みるほか、次回も欠席しそうだという場合には、調査官から出頭勧告が行われることもあります。
なお、申立人がその時点でも相手方とやりとりがある場合、申立人に対しても、相手方に出席するように伝えて欲しいと言われます。
そして、相手方が欠席した場合でも、申立人の主張の聞き取りは行われます。
その場合、申立人側の事情だけでなく、相手方の職業や収入、労働状況なども質問されます。
2回目の調停日も相手方が出席しない場合には、調停を終了し、審判に移行する可能性があることが伝えられ、その場合には申立人が相手の収入を証明しなければならないので、資料を準備するように言われます。
住民票が同じであれば、ほとんどの自治体で相手方の課税証明書が取得できるので、それを取得することになります。
自営業の場合、確定申告書が必要になりますが、こちらは税務署が出してくれません。
そのため、別居前に写しを確保しておくことが重要になります。
これらの証拠がない場合は、通帳の取引履歴や、同居していたときの家計の状況、相手の学歴・職歴などから判断せざるをえません。
物的な証拠がない場合には、陳述書(上記の事情を説明した書面)の提出を求められる場合があります。
2 2回目の調停欠席した場合
相手方が2回目も欠席した場合で、何の連絡もない場合は、ほとんどの場合審判に移行します。
審判とは、簡易な裁判だと思ってください。
審判では、上記で書いたような収入資料を提出し、それでも足りない場合は、調査嘱託という手続で、勤務先に源泉徴収表の提出を求めたりします。
なお、前述の通り、確定申告書については、税務署は裁判所の問い合わせにも答えてくれません。
これらの資料から裁判所が婚姻費用を判断しますが、資料が不足していると考えた場合には、賃金センサス(政府統計による平均賃金)なども考慮して判断されます。
なお、民事訴訟では、被告から反論がない場合は原告の主張がそのまま認められますが、婚姻費用の審判では、裁判所が合理的と考える金額となるため、根拠もなく高額の婚姻費用が認められることはありません。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。