離婚せずに婚姻費用をもらうことが必ずしも得とはいえません
ときどき、「他の弁護士さんに、離婚せずに婚姻費用をもらった方が得ですよと言われました」という方がいらっしゃいます。
たしかに、離婚を拒否して婚姻費用をもらった方が得な場合もありますが、必ずしもそうではありません。
なぜなら、お子さんがいる場合、離婚すると公的な補助が受けられることがあるからです。
自治体によって、援助の内容や支援の条件が異なるため、お子さんをお持ちの方で離婚を検討している場合には、お住いの自治体に相談してみてください。
たとえば、当事務所のある中央区では以下のような支援制度があります(詳しくは、こちらの中央区のホームページをご覧ください)。
・児童扶養手当
・児童育成手当
・医療費助成
・区立ひとり親世帯住宅への入居
など
また、制度利用の条件も自治体によって異なります。
最近では、離婚までしていなくても、住民票が配偶者と異なる場所にあり、離婚調停や離婚訴訟をしている証明書(係属証明書)があれば、事実上離婚状態にあるとして支援が受けられる自治体が多いようです。
具体的にシミュレーションをしてみましょう。
たとえば、相談者は、3歳の子供がいる女性で、子供を連れて別居したとします。
夫の年収は300万円、相談者の年収は120万円とします。
夫から婚姻費用をもらう場合、双方の年収を裁判所が公表している婚姻費用算定表に当てはめると、月額4万円程度です。
これに対し、中央区の各種補助を利用すると
・児童扶養手当:4万2000円
・児童手当:1万3500円
合計5万5500円がもらえることになります。
さらに医療費の助成があることを考えると、圧倒的に離婚した方が得ということになります。
また、仮に子供を認可保育園に預けていたとすると、保育料は前年の所得に応じて決められるので、保育料が無料となることもあります。
もちろん上記は離婚前後で年収が変わらないケースですから、別居したので正社員になり大幅に収入が増えるというケースでは異なりますし、上記のように別居と離婚調停をしていることさえ証明できれば支援を受けられるという自治体であれば、上記の公的な支援を受けたうえで婚姻費用がもらえるということもあります。
いずれにしても、婚姻費用のみを理由に離婚拒否しようかとお考えの場合は、お住いの自治体で
①どのような支援があるか
②その支援は離婚が成立している必要があるのか
を確認し、離婚した場合と、離婚しなかった場合でどちらが得かよく比較してください。
なお、離婚に当たっては、経済的な面だけでなく、離婚した場合の精神的なプラス面や、再婚可能性も考えて、どういう方針で進めるのか検討することをお勧めします。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。