面会交流に関する最近話題になった裁判例
最近、面会交流に関する裁判例がいくつかニュースになっているので、まとめて紹介いたします。
現時点で、いずれも報道レベルでしか分からないため、間違いがあった場合には随時修正いたします。
1 東京高等裁判所平成29年1月26日判決
東京高等裁判所が、千葉家庭裁判所松戸支部の親権者を父親とする判決をくつがえしたとしてニュースになったものです。
概要は、母親が当時2歳の長女を連れて家を出て別居、現在長女は9歳、監護能力はいずれも問題はない。
母親が親権をとった場合の父親と長女との面会に関する主張は、月1回会わせる。
父親が親権をとった場合の母親と長女の面会に関する主張は、年100回会わせる。
千葉家庭裁判所松戸支部は、年100回の面会交流を約束する父親を親権者としました。
これに対し、東京高等裁判所は、面会交流の点のみで親権者をどちらにするか判断すべきでないこと、年100回の面会は長女に負担が大きく友達と遊ぶことも制限されてしまうことなどから、母親を親権者としました。
東京高等裁判所の判断は、極めて常識的だと考えます。
現実的に考えて、年間100回=週2回も別居親に会わなければならないとすると、あまりにも長女の生活が制限されてしまいます。
各マスメディアで、一審を画期的判決であると報道されていましたが、単に変わった裁判官だなというのが私の感想です。
たとえば、青い鳥判決に代表されるように、ときどき理解しがたい判決が出ますが、その一種という印象です。
なお、父親側の支援団体は、連れ去りを助長する判決だと批判しますが、では、母親は子供をおいて出ていけば良かったのでしょうか?
そうしたら、子供を見捨てたと言うのではないでしょうか?
2 平成28年12月27日熊本地方裁判所判決
子供との面会を拒否している母親に対して70万円、前の調停で連絡役となることを合意していた母親の再婚相手に母親と連帯して30万円の支払いを命じました。
母親の再婚相手に対する損害賠償を認めたことが異例として報道されました。
しかし、これは先立つ調停で再婚相手が連絡役になるとの合意があったことが異例なのであって、そのような合意をしたにもかかわらず合意に違反した者に対して損害賠償を命じること自体は特筆すべきことではないと思います。
3 平成29年2月8日東京高等裁判所決定
平成26年に東京家庭裁判所が月1回の面会を認める審判を下しましたが、その後も子を監護する父親が面会を拒否し続けたため、母親が間接強制(面会を実行しない場合にペナルティとして金銭を支払わせる)の申立をした事案です。
申立を受けた東京家庭裁判所は、父親に1回拒否するごとに100万円の支払いを命じました。
これに対し、東京高等裁判所は、ある程度高額なのはやむを得ないが100万円は高すぎるとして、30万円に減額しました。
なお、東京家庭裁判所が100万円の決定を出したあとに、母親は子供と5年ぶりに会えたようです。
この決定の前の東京家庭裁判所の決定について、異例に高額のペナルティを認めたとして報道されました。
その際、拒否1回に月5~10万円程度が一般的などと書いてあるメディアもありましたが、必ずしもそうではありません。
間接強制の際の金額は、その金額が精神的圧迫となり、実行するであろうと思われる金額を裁判官が判断することになります。
つまり、監護親が高収入であればあるほど、ペナルティを高額にしなければ精神的圧迫がかけられないため、高額のペナルティとなります。
拒否1回につき5~10万円というのが多い(私の感覚としては、もう少し少ないように思います)というのは、平均的な収入の方の場合、その程度の金額で十分なプレッシャーとなるからです。
ですから、たまたまお金持ちだったから、金額が大きくなっただけで、特段注目するような裁判例とは思えません。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。