不貞の証拠となるメールが裁判で採用されない可能性があります!
離婚理由が相手の不貞(浮気)である場合、その証拠として夫・妻のメールや携帯電話内の写真等が提出されることがあります。
ほとんどの場合は、それらは離婚裁判や損害賠償請求訴訟の証拠として採用されます。
しかし、どんな場合にでも証拠として認められるわけではありません。
民事裁判における証拠は、刑事訴訟ほど厳格に規制されているわけではありませんが、それでも、相手の人格権を侵害し、反社会的な手段で収集された証拠は、裁判での証拠として認められません。
夫・妻の不貞(浮気)の証拠となるメールが、このような違法収集証拠であることを理由に証拠として認められなかった事例として、東京地方裁判所平成21年12月16日判決というものがあります。
この判決は、刑法133条(信書開封罪)で、個人間の意思を伝達する文書を保護していることを前提に、携帯電話でのメールの窃取は、デジタルデータのコピーなので、刑法上は違法とはならないが、信書と同様の実質を有するものであり、信書と同様に正当な理由なく第三者に開示されるべきものではない。そうであれば、このようなメール文及びそのデータも、正当な理由なく第三者がこれを入手したり、利用したりすることは許されないというべきであるとします。
そして、別居した夫婦間で、既に離婚調停も行われている状況で、子供の面会のために会った相手の電話のデータを無断コピーしたものであること等から、刑事上罰すべき行為と実質的に同等に重大なものであるとして、メールを証拠として認めませんでした。
この判決に関しては、やや厳しいかなとも思いますが、上記のように別居して離婚調停も行われているような場合には、ほとんど他人といえるような関係ですから、その状況で携帯電話のデータを丸ごとコピーした(不貞相手だけでなく他の人とのやりとりも含め)ことなどを考えれば、やむを得ないと考えます。
ここまでやると、さすがにやり過ぎとなりますが、相手が寝ている間にLINEを見たら浮気していたので、その画面を自分の携帯で撮影した程度でしたら、十分証拠として採用されます。
なお、上記判決は、どこまで参考にしていいのか疑問もあります。
というのは、この判決は、「他方配偶者が一方配偶者に不貞行為があるとの疑いを抱いた場合に,他方配偶者の信書や携帯電話機等のメールを見たり,その内容を自ら保存すること等が一般的に許されるとはいえない(疑いを抱くことに客観的で合理的な根拠があるときは,それに基づいて不貞行為を立証すれば足りるであろうし,それがないときは,不貞行為の疑いを抱くこと自体が他方当事者の単なる主観ないし思い込みにすぎないことも多く,その証拠を一方当事者のメール等から得ようとすること自体が相当ではない。)」と判示しているからです。
要するに、相手のメールを見ないと浮気が確信できないなんてことはない、と言っているわけですが、理解しがたい経験則です。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。