死後離婚?それなら自分で簡単にできます!
死後離婚なる言葉をニュースサイトを見ていたらみかけました。
民法には、死後離婚という規定はないため、新しい制度ができるのかと思い読んでみたら、姻族関係終了届のことを、死後離婚という造語で読んでいるようです。
ちなみに、姻族関係終了届は、市区町村役場に届出をするだけですので、弁護士等に依頼する必要はありません。
では、姻族関係終了届とは何でしょうか?どんなメリットがあるのでしょうか?
結論からいうと、「嫌いな義両親と親族扱いされなくなって気分がすっきり」以上のメリットはほとんどありません。
もう少し詳しく説明します。
民法725条3号は、3親等内の姻族を親族として定めています。
姻族とは、結婚相手の血族です。
血族とは血のつながりがある者です(厳密には養子などを含むので、ちょっと違いますが)。
3親等内とは、具体的には両親、兄弟姉妹、甥姪、おじおばのことです。
では、この姻族になったらどんな義務を負うのでしょうか?
この点、民法には、
730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
877条1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2項 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
との定めがあるのみです。
なお、877条2項の扶養義務が課せられることは、まずありません。
なぜなら、そんな義務を課せられそうになったら姻族関係終了届を出せば良いので、実効性がないからです。
もしかしたら、義両親が生活保護の受給申請をした場合には自治体から扶養可能性について問い合わせがあるかもしれませんが、断れば良いだけです。
お墓や法事、親戚づきあいなどは、慣習などに基づいて行われているだけで、姻族関係終了届をしなくても拒否できます。
逆に、たとえ姻族関係終了届を出していても、あなたが亡くなったときに、あなたの子供達が、あなたとあなたの亡くなった夫(妻)を同じ墓に埋葬することはできるので、「同じ墓に入りたくない」という希望を叶えられるかどうかは、あなたの子供次第です。
旧姓に戻したいという場合も、姻族関係を終了させなくても夫・妻が死亡すれば当然に旧姓に戻すことができます(民法751条1項)。
お子さんがいる場合には、お子さんは義両親の血族ですので、姻族関係終了届を提出しても、お子さんと義両親の関係は変わりません。
ですから、姻族関係終了届を出しても義家族から「あとつぎの母親だろ!」と言われることもあるようです。
ということで、姻族関係終了届を出す意味は、ほとんどありません。
では、出さない意味は?
と聞かれると、これもとくにありません。
相続関係にも影響はありませんし、遺族年金等にも影響はありません。
ですから、義両親と上手くいってなかったので、姻族関係が続くのが嫌だなと感じたら、姻族関係終了届を出してもいいと思います。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。