養育費を一括で支払うように請求できるか?
残念なことですが、養育費の支払をしなかったり、途中で止めてしまう親が一定割合います。
そこで、離婚時に子供が成人するまでの養育費を一括で支払ってもらえないでしょうか?
この点、相手が一括支払に同意してくれるならば、支払ってもらっても何ら問題はありません(後述の贈与税の問題はありますが)。
ですが、裁判になった場合は一括で支払ってもらうことは原則としてできません(東京高等裁判所昭和31年6月26日決定)。
例外的に一括で請求できる場合として、長崎家庭裁判所昭和55年1月24日審判は、長期間にわたる確実な履行が期待できないような場合を挙げています。
具体的には、相手が職を転々としていたり、相手が再婚で、前妻(夫)との間にも子がいるにもかかわらず養育費を支払っていない、判決が出ても支払わないと言っている、などの事情があれば、養育費を一括請求できる可能性はあります。
もっとも、養育費を一括で払えるということは、ある程度相手が裕福ということですから、上記のような要件を満たすケースは少ないかもしれません。
仮に養育費を一括で受け取ることになった場合、原則として贈与税がかかることになる点も注意が必要です。
なぜなら、相続税法21条の3第1項2号に、税金がかからない場合として、
「扶養義務相互間において、生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」
という規定があるのですが、この解釈について相続税法基本通達21の3-5が、
「生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする」
としているからです。
養育費を一括で貰いつつ、贈与税付加の対象外とする方法として、信託銀行との間で金銭信託契約を結んで、毎月一定額を受け取るようにする方法があります。
なお、税金については、念のために税務署や税理士さんに相談してください。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。