別居中の荷物の引渡し
離婚に向けての別居で、とりあえず家を出てきてしまった場合、元の住居に荷物を取りに行きたいということがあると思います。
多くの場合は、話しあって解決しますが、相手が引渡しに応じなかったり、極端な場合は「捨てる!」といわれたりする場合があります。
このような場合、理論的には、民事訴訟で所有権に基づく引渡し請求をすることなり、緊急性を要する場合には保全という手続で判決が出る前に荷物を確保することになります。
もう一つ、大阪高等裁判所の決定例が一つあるだけですので、この手続き自体が認められるか微妙な問題がありますが、家庭裁判所に夫婦の協力扶助の一態様として審判申立を行い(家事事件手続法39条別表2第1項)、審判前の保全処分(家事事件手続法105条以下)という方法で荷物を確保することもできるとされています(大阪高等裁判所平成1年11月30日決定)。
これらはどちらも同じ効果があるのですが、審判申立の方が申立書の記載が訴状ほど厳格さが求められないので行いやすいかもしれません。
他方、上記の通り大阪高裁の決定例があるのみで、しかも一審では、そのような手続は認められないと判断されていることから、確実性を求めるなら民事訴訟を起こした方が良いでしょう。
では、これらの手続が間に合わず、処分されてしまったらどうなるかですが、その場合は、損害賠償請求をするしかありません。
さて、最初に、理論的にはと記載いたしましたが、現実には、よほど高価なものや思い出のものでない限りは、費用倒れに終わるため、泣き寝入りということが多くあります。
民事訴訟提起が現実的でないとすると、離婚訴訟において、相手が確保した分の家財道具を財産分与を決めるにあたって評価せよと主張することになりますが、中古家具として二束三文、または算定不可とされることが多くあり、結局は泣き寝入りになってしまいます。
どうしても確保したいものや、思い出の品などは別居の際になるべく持ち出しましょう。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。