財産分与の基準時と評価時
離婚時の財産分与で夫婦共有財産を分け合うことになりますが、多くの場合、離婚を決意してから、離婚に至るまで時間がかかります。
そのような場合、どの時点の財産が財産分与の対象になるのでしょうか?
また、モノを分け合う場合、いつの時点の価格で評価して分ければいいのでしょうか?
財産分与の基準時と評価時について、以下順に解説します。
1 財産分与の基準時
財産は日々増減しているので、いったいどの時点の財産を基準に財産分与をするのかが問題になることがあります。
この場合、原則として別居時とするのが裁判例です。
なぜなら、財産分与は、夫婦で協力して得た財産を離婚にあたって分けましょうという制度であるところ、別居後は夫婦の協力はないと考えられるからです。
ですから、別居時にあった財産が、その後に生活費のレベルをこえて費消されていた場合、その財産はあるものと仮定して財産分与がなされることになります。
逆に、別居時にはあまり財産がなく、その後、離婚時までにお金を貯めた場合、別居後にたまったお金は財産分与の対象にはなりません。
また、離婚が先行し、別居が後になり、離婚から別居まで家族として生活していたような場合にも別居時時が財産分与になります。
なお、離婚から別居までの期間が長いと離婚に伴う財産分与ではなく、内縁関係解消に伴う財産分与になる可能性があります。
このように原則として別居時が財産分与と考えておけばいいのですが、例外は単身赴任の場合です。
単身赴任も別居の一種ではありますが、家族としての協力関係がなくなったわけではないので、単身赴任中に離婚話が出て離婚になる場合には、離婚を申し出たときが夫婦としての協力関係がなくなったと考え、財産分与の基準時とされるのが一般です。
2 財産分与の評価時
上記のとおり、別居時を基準として財産を開示しあった場合、現金や預貯金であれば金額が明確ですが、モノである場合、いったいいつの価格を基準に金額を決めるのかが問題となります。
この、いつの時点の価格かについては、財産分与の時点です。
とはいっても、今この瞬間の価格算定は不可能なので、なるべく財産分与に近い時点での価格になります。
裁判離婚で財産分与を求めるのであれば、その裁判の口頭弁論終結時(判決の直前の期日)が基準になります。
たいていの場合は、それほど厳密に直近価格を算定する必要はありませんが、株などの場合は、一日で暴落ということもあるので、財産分与を取り決めるときは当日の価格をチェックしておきましょう。
【関連コラム】
・財産分与の基礎
・宝石や時計などは財産分与の対象となるか?
・ストックオプションの財産分与
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。