相手の連れ子との養子縁組・特別養子縁組
相手に子供がいる方と結婚する場合、相手の連れ子と養子縁組をすることが多くあります。
同じような名称で特別養子縁組というものがありますが、どう違うのでしょうか?
1 養子縁組
1-1 養子縁組みとは何か?
養子縁組とは、養子と養親との間に、実際の親子と同じ関係を生じさせようとする制度です(民法809条)。
ただし、養子縁組をしても実の親との親子関係は残り、二重に親子関係が成立することになります。
また、戸籍には「養子」として記載されます。
では、実生活はどうなるのかというと、親権は養親が行うことになります(民法818条2項)。
また、氏(姓、苗字、苗字)も養親と同じ氏を名乗ることになります。
さらに、養子縁組の日から、養親の親族との関係で、養子も親族となります(民法727条)。
ここで特徴的なのは、親族関係については、養子縁組の日から発生するだということです。
このことから、養子縁組前に養子に子供がいた場合、養子のみが養親との関係で親族関係が生じ、養子の子供は養親親族の孫とはなりません。
養子縁組み後に養子に子供が生まれると、その子は当然に養親親族の孫となります。
養子縁組をすると、養育費も影響を受けます。
民法は、原則として実親よりも養親との関係を優先しているので、子供の養育費は養親が優先的に負担する必要があります。
ですから、養親に経済的問題がない場合、それまで実親が支払っていた養育費について、実親の支払義務がなくなることがあります。
1-2 養子縁組の手続き
子供が15歳以上の場合は本人の同意があれば、市区町村役場でもらえる養子縁組届に必要事項を記入して届け出れば養子縁組が成立します。
子供が15歳未満の場合は、法定代理人(親権者など)の同意が必要となります。
なお、通常、未成年者を養子縁組をする場合には、裁判所の許可が必要ですが、相手の連れ子と養子縁組をする場合には、裁判所の許可は必要ありません。
2 特別養子縁組
1-1 特別養子縁組とは何か?
特別養子縁組とは、縁組みの日から実親との親子関係を終了させて、養親との間に実の親と同じ親子関係を成立させるものです。
この制度は、実親が子供を育てるうえで問題があるときに認められる制度ですので、戸籍も1点を除き、実の親子と同じように記載されます。
唯一違うのは、民法817条の2の判決確定日が記載される点です。
実の親子と同様にしたいという要望と、血縁関係がないことが分からないと困るのではないかという要望の調整から生まれた妥協案でしょうが、養子であることを全く隠せておらず、なぜこんな記載にしたのか意味が分かりません。
1-2 原則として連れ子との特別養子縁組は認められない
特別養子縁組をするには、裁判所の許可を得なければなりません(民法817条の2~)。
このときの許可の条件として、養親が25歳以上であることや、養子が原則として6歳未満であること、実親の同意が書かれていますが、最も問題になるのは、民法817条の7です。
民法817条の7は、「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、この利益のために特に必要があると認めるとき」にしか特別養子縁組を認めないとしています。
この規定から、相手の連れ子との特別養子縁組の許可申立てにおいては、実の親の監護が困難又は不適当といえないとして、認められないのがほとんどです。
例外的に認められたものとして、実は再婚相手の子供だったけれども、前夫の子供として出生届を出し、不服申立期間が過ぎてしまったので、前夫の子であることの無効主張ができなかったものがあります(東京高等裁判所平成8年11月20日)。
上記裁判例については、本来、特別養子縁組制度が予定しているものではありませんが、普通養子縁組だと血縁関係のない元夫との間で父子関係が残ることから、元夫との父子関係を断ち切る特別養子縁組という制度を例外的に利用したものと思われます。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。