浮気相手は原則として離婚慰謝料を支払う義務はないとした判決

2019-02-20

最高裁判所第三小法廷が、浮気相手は、浮気そのものの慰謝料請求はともかくとして、離婚慰謝料を支払う義務は原則として負わないと判断したのでご紹介します。

 

《最高裁判所第三小法廷判決 平成31年2月19日》

 

1 本件の経緯

・平成6年3月 被上告人(元夫)とA(元妻)が結婚
・平成20年12月 上告人(浮気相手)と元妻が知り合う
・平成21年6月以降、不貞行為(浮気)に及ぶ
・平成22年5月 元夫が元妻の浮気を知る。このころ浮気関係も解消
・平成26年4月 長女の大学進学を機に別居
・平成26年11月 元夫が離婚調停申立
・平成27年2月25日 調停離婚成立

 

2 裁判所の判断

「離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で、不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
以上によれば、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないと解するのが相当である。」

 

3 説明

学説では、不貞が原因の離婚の場合、理論的には、妻が浮気をしたという精神的苦痛に対する慰謝料と、離婚に追い込まれたという精神的苦痛に対する慰謝料の2つがあるとされてきました。

 

しかし、実際の裁判では、この両者を明確に区別することなく判断が下されてきました。

 

ほとんどの場合は、時効期間である3年経過前に不貞慰謝料あるいは離婚慰謝料の請求がされるので、両者の区別が明確でなくても問題はありませんでした。

 

ところが、本件では、不貞を基準とすると時効が完成しているため、離婚を基準として離婚慰謝料が請求されました。

 

そのため、裁判所も、不貞慰謝料と離婚慰謝料を明確に区別して判断する必要があり、出されたのが本判決です。

 

判決では、原則として、不貞相手に対する離婚慰謝料は認めません、例外的に婚姻関係に対する不当な干渉があった場合には、離婚慰謝料の請求を認めます、としています。

 

4 当職の意見

今回の判決により2つ新たな問題が生じる可能性があります。

 

① 今回の判決で、不貞慰謝料と離婚慰謝料が明確に区別されるようになったことから、慰謝料額に影響を及ぼす可能性があります。

 

配偶者については、不貞慰謝料+離婚慰謝料が請求できるのに対し、不貞相手に対しては、不貞慰謝料のみ請求できるということになると、離婚慰謝料分少ない金額しか請求できないということになりそうです。

 

さらに、配偶者が慰謝料を支払った場合、不貞相手に求償できるのですが、従来であれば、例えば、配偶者が支払った慰謝料200万円のうち原則として半分の100万円は不貞相手が負担してくださいといえたのが、離婚慰謝料部分を求償できなくなりそうです。

 

② 今回の判決では、例外を認めている点も問題となりそうです。

 

判決は、「婚姻関係に対する不当な干渉」があった場合は不貞相手も損害賠償を負うことを認めています。

 

ここでいう「婚姻関係に対する不当な干渉」とは何でしょうか?

 

不貞相手が元妻に対して、「離婚してくれるって言ったじゃない」と詰め寄った結果、離婚にいたった程度でいいのでしょうか?br>
それとも不貞相手が元夫に嫌がらせをするなどの行為が必要なのでしょうか?

 

今後、最高裁判所調査官による解説が出るはずですので、追記したいと思います。

 

 

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弁護士 本 田 幸 則
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