離婚後に婚姻中の浮気が発覚した場合に慰謝料を請求できるか?

2019-04-15

相手から離婚を要求され、相手の意思が固そうなので応じたところ、あとになって相手が浮気していたことに気づいたというご相談があります。

この場合、元夫または浮気相手に対して慰謝料(損害賠償)を請求できるでしょうか?

なお、日常的になじみのある浮気という言葉を以下でも使いますが、損害賠償の対象となるのは基本的には不貞行為(性交渉をともなう浮気)または不貞に準じるような行為だと考えてください。

 

1 そもそも、離婚後に浮気が発覚した場合でも慰謝料請求権が発生するのか?

離婚後に浮気が発覚したということは、離婚原因は浮気ではないと反論される可能性があります。

そこで、そもそも、離婚後に浮気が発覚した場合でも、婚姻期間中の浮気を理由に慰謝料を請求できるかが問題になります。

 

この点について、婚姻期間中は貞操義務(他の異性と性交渉しない義務)を負うのだから、それに違反した場合は違法な行為となります。

そして、違法な行為が、発覚したのが離婚後だからといって適法な行為になることはないので、離婚後に浮気が発覚した場合でも慰謝料請求が可能だということになります。

 

なお、当然のことですが、離婚前に浮気をしていたんだという証拠は必要になります。

典型的には、浮気相手との間に子供が生まれており、その子の出生日から逆算すると、離婚前から浮気をしていたことが明らかといった場合があります。

 

2 慰謝料の金額は?

慰謝料の金額については、裁判例が非常に少なく一般化することはできませんが、50万円前後と思われます。

 

ただし、裁判例を見ると、離婚原因が相手の浮気とは言い切れないことを理由に金額を判断しているようですので、たとえば、浮気を開始する直前まで円満な夫婦関係であり、浮気開始後に相手から突然離婚を要求され、相手の要求に根負けしてやむなく離婚ということが証拠からうかがわれるような場合には、もう少し金額が上がり、一般的な不貞行為を原因とする離婚の金額(200万円前後)に近くなるかもしれません。

 

3 請求の相手方は?

慰謝料が請求できるとして、その相手方は元配偶者?それとも浮気相手?

 

請求相手に関しては、裁判例では浮気相手としているようです。

 

おそらく、元配偶者との間では、離婚に当たり離婚協議書や調停調書などで精算条項(これで全部解決したという条項)を入れていたり、裁判離婚の場合には既判力という問題が生じるからではないかと思います。

もちろん、浮気をしていることを知らなかったから無効(錯誤無効)だということもできますが、慰謝料請求の前に、離婚の合意が錯誤無効だという争いをしなければなりません。

その手間を考えると、浮気相手を相手方として請求した方が簡単だということになります。

 

4 離婚協議書を作ってあっても請求できる?

離婚時に離婚協議書を作っており、その中に「本件についてはすべて解決し、お互い債権債務を負わない」といった精算条項といわれるものが書いてあることがあります。

 

この記載があるから請求できないのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、請求可能です。

 

なぜなら、離婚協議書作成時には知らなかったのですから、合意の効力が及ばないからです。

 

この件に関しては、そのような争い方をした事例は見当たりませんが、たとえば交通事故で示談をした場合でも、示談時には予想していなかった後遺症が発覚した場合には、その後遺症について損害賠償請求が認められるのと同じです。

5 裁判例の紹介

上記のとおり、離婚後に浮気が発覚したから、改めて慰謝料を請求するというケースの裁判例は非常に少ないですが、以下のようなものがあります。

 

【東京地方裁判所平成28年2月18日判決】

「前記第2,2の争いのない事実,証拠(甲1~6)及び弁論の全趣旨によれば,原告と原告元夫の婚姻期間は約4年5か月であること,被告と原告元夫との本件不貞行為の期間は平成26年3月末頃から約1年にわたること,被告は交際当初から原告元夫に妻がいることを認識していたこと,平成26年6月頃,被告が原告元夫に対して離婚しないのであれば別れたいと伝えたところ,被告は原告元夫から暴力を振るわれるようになるなどして別れることができないまま関係が続き,原告元夫による本件暴力行為が原因で本件不貞行為が終了したこと,原告は離婚の際に原告元夫と被告が本件不貞行為をしていたことを知らなかったこと,離婚後,原告が子供二人を引き取り監護養育していること,原告は原告元夫に損害賠償を請求するつもりがないことが認められる。
上記認定事実その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件不貞行為により原告は一定程度の精神的苦痛を受けたものといえ,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料額は70万円と認めるのが相当である。
また,本件事案の内容及び難易,審理経過,認容額その他諸般の事情を考慮すると,本件不貞行為と相当因果関係を有する弁護士費用は7万円と認めるのが相当である。」

 

【東京地方裁判所平成19年 9月28日】

「しかしながら,既に原告とAは既に離婚していること,被告とAは現在は婚姻しており,それぞれ各自の社会生活を営んでいること,原告とAの婚姻関係破綻の理由が,被告とAとの交際を原因としていることまでの証拠は存在しないこと,本件不法行為による損害賠償請求が過去の慰謝料とも言うべきものを求めていること,現在もまだ紛争を解決できない責任はすべてAにあることなどの事情に加え,その他本件において認められる一切の事情を併せ考慮すると,本件において認容すべき慰謝料額は,20万円が相当である。」

 

 

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