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子の監護者の指定、子の引き渡しの申立をするべきか?

離婚前に相手が子供を勝手に連れて出てしまった場合に取れる法的手続として、子の監護者の指定と子の引き渡し請求という方法があります。

いずれも審判(裁判所に判断を求める)申立が可能ですが、ほとんどの場合、審判を申立てても裁判所の職権で調停にされてしまいます。

また、いずれも審判前の保全処分という手続が可能です。

保全処分とは、調停や審判を待っていたのでは手遅れになるので、仮に決めてくださいという手続です。

この保全処分ですが、実際には、調停や審判と同時に判断されることも多く、子供の監護状況が相当不適切で裁判所が早く判断してくれそうな場合以外は、保全を申立てる意味がないという状況になっています。

なお、連れ出し方が誘拐のような悪質な場合は、刑法上の略取誘拐罪が成立することもありますし、人身保護法という緊急に取り戻す手続をすることも可能です。

以上の手続があるとして、常に子の監護者の指定や子の引き渡しの申立をした方が良いのでしょうか?

私は、申立をしても、裁判所がこちらの主張を認める可能性がほとんどない場合には、これらの申立はしない方が良い場合があると考えます。

なぜなら、申立が認められそうにない場合、方針を面会交流の実現にシフトせざるを得ませんが、そうなったとき、相手方から面会を拒否される可能性が高まるからです。

このようなことになる理由は2つあります。

1つは、子の監護者の指定を申立てるということは、相手が子の監護者として不適切だということを主張する=相手の性格に問題があるから親として不適格、家事能力に問題があり子供の面倒を見られない、生活環境が悪く子供が健全に育たない、相手の親族の援助が得られない又は援助者として不適切である、などのことを主張する必要があります。

つまり、相手にとってみれば、悪口のオンパレードということになります。

悪口を言われて気持ちのいい人間はいませんから、相手は「こんなことを言うやつに子供を会わせたくない」となります。

もうひとつは、子の監護者の指定と子の引き渡しを求めている=子供を連れ去られるかも、という思考に結びつきやすいからです。

そうなると、相手方は、「面会を認めたくない」という心理になります。

もちろん、なんとなく不安だから子供に会わせないという主張は、法的には認められないのですが、現実問題として、たとえ裁判所が面会交流を認める審判をしても、面会が実行されない割合が高いことを考えると、相手に「面会に応じてもよい」という心理になってもらうことは重要です。

もっとも、最初から申立をしないのではなく、いったん申立をしたうえで、「取下げるから面会を認めて欲しい」という交渉をする方が効果的な場合もあります。

このあたりは、相手の性格などによって使い分けなければなりません。

 

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