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子供を引き渡してくれないときすべきこと

子供を相手が連れ去った、あるいは、無理やり追い出されてやむなく子供をおいて別居することになったという場合、相手に子供の引渡しを請求する方法として、以下の1~4の手続が可能です。

どの手続きをとるにしても、子供の引き渡し請求を本気でやろうとすれば、相手がいかにひどいかを主張する必要があります。

そのため、もし、子供の引き渡しが認めれず、やむなく面会交流を請求する場合、相手の反発を受けることは必至ですので、子供の引き渡し請求をするかどうか、するとして相手への牽制として形式的にするのか、本気でするのか、よくご検討ください。

1 子の引渡し調停・審判の申立

あなたが親権者であったり、監護権が認められる場合には、家庭裁判所に「子の引渡し調停(審判)」の申立をすることができます。

もし、別居しているけれども、子供の監護をどちらが行うかが決まっていない場合には、子の引き渡しとセットで、「子の監護者の指定調停(審判)」の申立てをセットで行います。

調停は裁判所で行う話合いで、審判は裁判官が判断を下すものです。

法律上は調停でも審判でもどちらの申立も可能ですが、多くの場合は審判申立をしても裁判官の職権で調停に移行されます。

調停で話しあっても合意ができない場合は調停が不成立となり、自動的に審判へと移行します。

子の監護者の指定とセットで申立てた場合には、審判も同時になされるのが通常です。

もともと親権や監護権があれば、子の引き渡し請求が認められないことはほとんどありませんが、たとえ親権や監護権があっても、親権者(監護権者)に明らかに親として不適格な行状が見られたり、相手の連れ去り行為から何年も経っているような場合には例外的に認められない場合もあります。

ですから、子供を連れ去られたり、無理やり追い出された場合は速やかに申立を行ってください。

申立方法などは、裁判所の「家事調停の申立」のページの下の方に説明があり、書式もダウンロードできます。

この手続と一緒にしておきたいのが、「審判前の保全処分」です。

保全処分とは、審判を待っていられないので、とりあえずこちらに引き渡してくださいという手続です(実際には子の引き渡し審判と同時に結論が出されるというケースが多くあるので、必ずしもこの申立をする必要がないようにも思いますが、強い意思があることを示すために保全処分も申立てておいた方がよいでしょう)。

名称は「審判前」の保全処分ですが、調停の申立をした場合にも保全処分の申立は可能です。

法律上、審判前の保全処分は、急迫の事情がある場合で、権利者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるために必要な時にできるとされています。

この緊急性がどれほど差し迫っている必要性があるかは、裁判例によってばらつきがありますが、審判前の保全処分が認められている例は、多くの場合が相手が無理やり子供を連れ去ったような事案です。

2 人身保護請求

人身保護請求は、ある者が違法に身体を拘束されている場合(拉致監禁されているような場合)に、拘束から解放するための緊急の手続で、もともとは子供の引渡しを想定した制度ではありませんが、相手の行為が悪質な場合には利用できる制度です。

この手続の特徴は、違法な身体の拘束からの解放を目的としているため、極めて早く判断されることです。

原則として、申立をしてから1週間以内に、当事者の主張を聞く審問期日を開かないといけないことになっています。

審問期日は1回で終わることも多いですが、裁判所が1回では不十分と考えた場合には2回目以降も開かれます。

そして、審問終結の日から5日以内に判決を言い渡さないといけません(実際には審問終結後、引き続き言い渡されることが多くあります)。

また、この手続では、子供の代理人が選任されるのも特徴です。

代理人は、通常、刑事事件の国選弁護人を選任する手続と同様の手続で、弁護士から選任されます。

ただし、費用は当事者の負担となります(とりあえず申立人が負担し、請求が認められれば通常は判決で相手の負担とされます)。

子供の代理人に選任された弁護士は、子供自身の意見や子供の監護環境などを調査のうえ意見書を書き提出します。

意見書は見ることができるので、納得がいかない場合は、意見書に対し反論等をすることになります。

上記のように早期に子供を取り戻せる方法ではありますが、違法に身体拘束されている者を解放する緊急の手続ですから、認められるのは以下の要件を満たす極めて例外的な場合です。

まず、申立は弁護士しかできません。

次に、相手の行為に顕著な違法性が必要です。

とくに、まだ離婚していない場合には、相手にも親権がありますから、相手の下では子供の健康が害されるとか、教育を受けさせてもらえないなど、子供の福祉に反することが明らかな場合に限られます。

さらに、他の方法によっては、相当の期間内に救済目的が達せられないことが明白であることも必要となります。

最後に、被拘束者の意思に反しないことも必要です。

子供の場合、どの程度自分の意思で判断しているか問題となりますが、小学校高学年くらいから子供に有効な意思があると判断されます。

3 未成年者略取誘拐罪(刑法224条)での刑事告訴

たとえ親でも未成年者略取罪が成立することがあります。

略取とは、無理矢理連れ去ることとをいいます(ちなみに誘拐とは、騙したり、誘惑して連れ去ることです)。

この場合、警察に告訴する(刑事処分を求める)ことになりますが、家族間のことですから、なかなか動いてくれないのが実情です。

警察が動くように証拠資料を持って行き、粘り強く捜査してくれるように訴えたりすることになりますが、同時に上記1または2の手続をするべきです。

4 その他

・離婚訴訟と一緒に子の引渡し訴訟をする

離婚訴訟の申立と一緒に子の引渡し訴訟をすることもでき、保全処分をすることもできますが、離婚訴訟は調停前置主義(裁判の前に必ず調停をする必要がある)が適用されるため、子の引渡しを求めるのが遅くなります。

この手続を取るなら、上記1の手続を取るべきであり、実際にもほとんど利用されていません。

・親権(監護権)に基づく妨害排除請求訴訟をする

相手が子供を渡さないことによって、親権(監護権)が妨害されていることを理由に、地方裁判所に妨害排除請求訴訟を提起することができます。同時に保全処分を申立てることもできます。

しかし、上記1とは違い裁判所調査官による調査などが利用できず、子供の状況など調査するなどの細やかな対応ができないにも関わらず、上記1より早く判断されることもないため、ほとんど利用されていません。

 

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