同居するように請求できるか?
現在別居しているけれども、やり直したいので相手に同居するように求められないか、というご相談を受けることがあります。
確かに、民法752条は、夫婦は同居しなければならないと定めています。
そして、夫婦間で話合いができない場合には、同居調停を申立てることができ、調停でも話合いがまとまらないときは、審判といって裁判所が同居を認めるのが相当がどうか判断してくれます。
しかし、たとえ同居しなさいという審判が出ても、同居を強制する方法はありません。
では、なぜ実際には同居が期待できないにもかかわらず、同居調停をするのでしょうか?
この点、裁判所が同居しなさいという審判をするのは、前提として夫婦関係が完全に壊れているとはいえないときです。
そうすると、将来離婚をするときに、同居しなさいという審判が出ているのに、同居をしなかった方が夫婦関係を壊したと認定される可能性が高くなります。
このように、同居請求調停は、夫婦関係修復目的よりも、将来の離婚を見据えた手続という意味合いの方が強いのではないかと思います。
夫婦関係の修復を主目的とするならば、円満調停を申立てるべきだと思います。
では、将来の離婚を見据えた申立だとして、具体的に離婚の時に慰謝料が取れるのかというと、同居の審判が出ただけで多額の慰謝料を請求するのは困難です。
というのは、同居をしなさいという審判がされる場合でも、夫婦関係が完全に壊れていないというだけで、別居に至るには様々な事情があるでしょうし、同居の審判が出た後も、離婚に至るまでは様々な事情があるでしょう。
離婚慰謝料は、そのような様々な事情を総合して決められるものです。
ですから、以前同居しなさいという審判があったのに同居しなかったというだけで多額の慰謝料が認められるとはいえません。
ただ、離婚を担当した裁判官に、相手の方が夫婦関係の修復に非協力的だったという意味で悪印象は与えられるかもしれません。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。