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婚姻費用は同居したことがなくても支払う義務があります

別居婚や週末婚、あるいは、同居準備中でまだ同居していないうちに夫婦関係が悪化した場合、婚姻費用の支払い義務は発生するのでしょうか?

この点について、東京高裁が、支払い義務があるという決定をしましたのでご紹介します。

1 事案の概要

申立人(妻)と相手方(夫)は、令和2年8月13日に結婚した。

同居予定ではあったが、すぐには同居はせず、毎週末会ったり、旅行に行ったりしていた。

その後、賃貸物件を借りて同居の話が進むも、令和2年10月12日に妻が同居を拒否したことから別居したままとなり、会うこともなくなった。

妻は、令和3年4月14日、横浜家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申立てたが不成立となり、審判となった。

令和4年6月17日、横浜家庭裁判所は、妻には婚姻費用分担請求権がないとして、申立てを却下したが、妻が東京高裁に即時抗告(不服申し立て)。

2 東京高裁令和4年10月13日決定

東京高裁令和4年10月13日は、次のとおり決定しました。
*妻が抗告人、夫が相手方です。

夫婦は、婚姻関係に基づき互いに協力し扶助する義務を負い(民法752条)、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)。この義務は、夫婦の他方に自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務であり、夫婦が別居している場合でも異なるものではない
相手方は、抗告人と一度も同居したことがなく、婚姻後は数えるほどしか直接に会ったことがなく、健全な婚姻生活を送っていたとはいえないところ、その原因は、抗告人に相手方との同居又は健全な婚姻生活を送る意思がなく、相手方との同居を拒んでいるためであるとして、婚姻費用分担義務を負わないと主張する。
しかし、当時37歳○○○○であった抗告人と当時41歳であった相手方は、互いに婚姻の意思をもって婚姻の届出をし、届出後直ちに同居したわけではないのもの、互いに連絡を密にとりながら披露宴や同居生活に向けた準備を着々と進め、勤務先の関係者にも結婚する旨を報告して祝福を受けるなどしつつ、週末婚あるいは新婚旅行と称して、毎週末ごとに必ず、生活を共にしていたことは、認定事実⑴のとおりであるから、抗告人と相手方の婚姻関係の実態がおよそ存在しなかったということはできず、婚姻関係を形成する意思がないかったということもできない
そして、婚姻費用分担義務は、前述したように婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではないから、婚姻の届出後同居することもないままに婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態に至ったとしても、前記法律上の扶助義務が消滅するということはできない。もっとも、婚姻関係の破綻について専ら又は主として責任がある配偶者が婚姻費用の分担を求めることは信義則違反となり、その責任の程度に応じて、婚姻費用の分担請求が認められない場合や、婚姻費用の分担額が減額される場合があると解されるものの、本件においては、仮に、抗告人と相手方の婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態にあるとしても、その原因が専ら又は主として抗告人にあると認めるに足りる的確な証拠はない。」

として、調停申立て以降、月額6万円の婚姻費用を支払うよう命じました。

3 コメント

本判決は、偽装結婚のような場合は別だが、原則として、夫婦である以上、同居したか否かにかかわらず婚姻費用分担義務を負うとしています。

もし、同居を婚姻費用支払いの条件とするなら、一旦同居した後に別居し場合も婚姻費用を支払わなくてよくなってしまうことからすれば、当然の帰結でしょう。

また、夫婦の協力関係を条件にした場合も、別居後は夫婦が協力することはなくなるので、ほとんどの場合に婚姻費用を支払わなくてよくなるという不都合があるので、この点からも当然の帰結といえます。

一般的感覚からすれば、籍が入っただけで、独身時代と何ら生活は変わっていないのに、なんでこんな権利義務関係が生じるのか疑問に思うかもしれませんが、それが結婚という制度です。

 

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