慰謝料請求,財産分与などの離婚問題,遺産分割,遺留分減殺請求などの相続問題は「なごみ法律事務所」

受付時間:平日10:00~20:00

子供が私立学校に通う場合の婚姻費用

子供が私立学校に通っていることを理由に、婚姻費用算定表の金額より多く請求することが出来るでしょうか?

多く請求できるとした場合、いくら上乗せできるでしょうか?

1 私立学校に通うことで婚姻費用が上乗せされる場合

子どもが私立学校に通っていることが婚姻費用の増額理由となるのは、支払い義務者側が子供の私立進学に同意していた場合です。

具体的には、子供が私立進学後に別居を開始し、婚姻費用を請求するような場合には、原則として子どもの私立進学に同意があったと考えられて、金額の上乗せが認められます。

もし、別居後に私立に進学し、それを理由に婚姻費用の増額を求めるような場合には、支払い義務者が私立進学に同意し、その援助をする意思を示していた場合です。

微妙なのが、私立進学には反対しなかったけれども、資金援助までは言及しなかった場合です。

私立進学を伝えた側としては、援助してもらいたいという趣旨で発言したけれども、義務者側では、単なる報告として受け取り、私立に進学してもやっていけるんだったらどうぞ、という趣旨で応じたとして争われる場合があります。

このような場合は、やり取りの具体的内容や、双方の収入、同居中の教育方針などの総合評価により判断されます。

具体的には、同居中から私立へ進学するための塾に通い、別居後も子供を励ますやり取りを何度も送り、かつ、義務者側の年収は1000万円だけれども、権利者側の年収は100万円しかないというケースでは、婚姻費用は増額されるでしょう。

2 私立学校に通う場合の婚姻費用の計算

まず、私立加算を考える前に、原則的な婚姻費用の計算が必要になりますが、その方法は大きく分けて2つ、婚姻費用算定表でざっくりと算出するか、標準算定式で細かく算定するか、です。

具体的な算定方法は、こちらの婚姻費用の計算のコラムをご覧ください。

で、原則的な婚姻費用が計算出来たら、これを修正しますが、考え方は大きく以下の2つです。

①私立学校の学費から公立学校の平均的教育費を差引いて、収入に応じて案分する方法

②生活費指数のうち教育関係費に相当する部分を差引いて養育費を計算し、私立学校の学費を収入に応じて案分する方法

実際の裁判では、ほとんどの場合に①の方法が用いられます。

ただし、高額所得者の場合は、原則的な婚姻費用で織り込み済みの教育関係費も高額になっており、平均額を差し引くと誤差が大きくなるため、②を使って計算しているものが多くなります。

具体的には、年収が1000万円を超えるくらいから誤差が大きくなり、1500万円を超えるようですと、②で計算した方がよいでしょう。

以下、①の計算と②の計算を具体的に説明します。

⑴ ①の計算方法

①は、統計上14歳以下の子の教育関係費の平均が13万1379円、15歳以上の子は25万9342円であることから、平均金額と実際の私立の学費との差額を、収入の比率で按分しようという考え方です。

計算式にすると、次のようになります。

加算額=(私立学校の学費-公立学校の教育費)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12か月

基礎収入については、婚姻費用の計算で説明しているので、そちらをご覧ください。

具体的に計算してみましょう。

私立小学校に通う子供の学費と施設利用費が年間100万円、義務者が会社員で年収が700万円、権利者が会社員で収入が300万円とします。

加算額=(100万円-13万1379円)×700万円×41%÷(700万円×41%+300万円×42%)÷12か月
≒5万302円

となります。

義務者の年収700万円、権利者の年収300万円、小学校に通う子供が1人の場合の標準的な婚姻費用は、婚姻費用算定表によると、11万円程度です。

これに、上記金額を加えて、婚姻費用は、月額16万円程度となります。

⑵ ②の計算方法

②の考え方は、婚姻費用算定表の元になっている標準算定式が、大人の生活費を100とした場合、子供はどれくらいかを考えて算出していることを応用する方法です。

この、子供の生活費が大人と比較して何パーセントかを表したものを生活費指数といいます。

2019年12月の改定の際に、この生活費指数について次の通り発表されています。

・14歳以下の子供の教育費を除いた生活費指数は51、教育費を考慮した生活費指数は62

・15歳以上の子供の教育費を除いた生活費指数は60、教育費を考慮した生活費指数は85

この教育費を除いた生活費指数を用いて標準算定式で婚姻費用を計算するか、婚姻費用算定表で簡易に標準的な婚姻費用を算出し、指数に応じた教育関係費を差し引き、実際の教育費を収入に応じて案分します。

具体的に考えてみましょう。

上記⑴で書いた通り、子供の生活費指数について、標準的な場合を62(15歳以上は85)として算出されているので、教育費を除いた指数51(15歳以上は60)に割り戻します。

計算式にすると次の通りです。

・教育費を除いた養育費(14歳以下)=養育費算定表の金額×51/62

・教育費を除いた養育費(15歳以上)=養育費算定表の金額×60/85

これに、実際の学費を収入に応じて加算します。

具体的に考えてみましょう。

⑴の場合と同じ、私立小学校の学費が100万円、義務者の給与収入が年700万円、権利者の給与収入が300万円の家族について考えてみましょう。

上記の収入を婚姻費用算定表に当てはめると、月額11万円程度が適切な婚姻費用となります。

ここから教育費を除いた婚姻費用を算出すると次の通りです。

11万円×51/62≒9万0484円

義務者の基礎収入は、700万円×41%=287万円

権利者の基礎収入は、300万円×40%=120万円

なので、実際の学費100万円のうち義務者が負担すべき金額は次の通り。

学費負担額=実際の学費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
=100万円×287万円/(287万円+120万円)
≒70万5160円

月額=70万5160÷12
≒5万8763円

教育費を除いた婚姻費用に、これを加えると以下の通りです。

8万2258円+5万8763円≒15万円

 

【関連コラム】

婚姻費用の計算|2019年12月改定対応
養育費・婚姻費用として塾代を請求出来るか?
コラム目次ー男女問題を争点ごとに詳しく解説-

 

お問い合わせ

東京都内をはじめ、千葉や神奈川、埼玉のほか、遠方の裁判所でも対応可能です。
お気軽にお問い合わせください。