夫婦の収入が同じでも、養育費よりもなぜが婚姻費用の方が高い不思議
たとえ離婚でもめていても、戸籍上の夫婦である以上は、原則として、収入の多い方が、少ない方に生活費を援助する必要があります。
これを婚姻費用といいます。
この婚姻費用は、夫婦2人だけの場合は、2人の基礎収入を足して2で割ることになります。
ですから、たとえば、夫婦のいずれも収入が600万円の場合、婚姻費用は0円となります。
この理屈からすれば、仮に子供がいた場合で、妻が子供を監護している場合、妻分の生活費の援助は必要ないはずなので、婚姻費用は、子供の養育費相当額、つまり、婚姻費用=養育費となるはずです。
ところが、なぜか、子供がいる場合には、夫婦双方の収入が同額でも、婚姻費用>養育費となります。
具体的に見てみましょう。
夫婦間に10歳の子供が1人いて、双方の収入が600万円だとしましょう。
裁判所のHPにある、養育費・婚姻費用算定表の表1が14歳以下の子供1人の場合の養育費ですので、こちらに双方の年収600万円をあてはめます。
ちょうど2~4万円と4~6万円の境界あたりなので、月額4万円となります。
次に表11の14歳以下の子供1人の場合の婚姻費用に当てはめてみましょう。
すると、4~6万円の真ん中あたりになるので、月額5万円となります。
夫婦の収入が同じ場合、相手の婚姻費用は払わなくてもいいはずなのに、なぜか婚姻費用の方が養育費より1万円多くなります。
これは、高額所得者ほど顕著で、同じ条件で双方の収入が1000万円の場合、養育費は月額6万円程度、婚姻費用は月額8万円程度となり、2万円の差がでます。
なぜこのような差が出るのか、ですが、養育費と婚姻費用の計算式の違いから不可避的に出てしまうものです。
とはいえ、夫婦双方の収入が同じ場合でも、子供がいる場合といない場合で、妻本人の生活費がもらえるかどうかが変わってくるというのは、何とも不思議な結果です。
では、この違いをどう生かすかですが、一つは、双方の収入が同じくらいの夫婦の婚姻費用の取り決めの際に、「収入が同じくらいなので、子供の養育費だけでいいよね?」と交渉することが考えられます。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。