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父母の紛争性が高いことを理由に、父親から母親を相手方とする12歳の子の面会交流請求を認めなかった事例をご紹介します。
なお、以下の文章に出てくる相手方が父親、抗告人が母親です。
また、「」内は裁判例の言い回しをそのまま引用したものです。
・「相手方は、抗告人が生活費などのために預金口座から預金を動かしたことについて警察に通報し、平成29年2月××日、抗告人に警察からの事情聴取を受けさせた」
・相手方が、市と銀行を被告として、児童手当は控訴人ではなく相手方に権利があるから支払えという訴訟を提起し、「同訴訟で抗告人らが三者で共謀して相手方が申請していない児童手当89万6000円を搾取した旨を主張した。同訴訟は相手方が抗告人の虚言癖を証明するために提起したものであった。」
・「相手方は、抗告人に対し、平成28年8月から平成29年11月までの婚姻費用を支払っていない。」
との事実を認定したうえで、以下のように判断しました。
「原審で試行的面会交流が実施できなかったことにより、本件の面会交流の実現可能性を見極め、面会交流の具体的内容や条件の検討をすることが困難となっており、当事者間の紛争の実情に鑑みると面会交流を実施できるだけの信頼関係と協力関係が形成されているとも言い難く、当事者間で面会交流の実施に向けた具体的協議をすることも困難といえる。そうすると、現時点で相手方と未成年者らとの面会交流を実施するにあたっての諸条件が整っているとは認められない。
なお、抗告人が試行的面会交流の実施を拒否したことは、試行的面会交流の意義、目的を考えると遺憾と言わざるをえない。しかしながら、その拒否の事実を面会交流実施の可否を判断するにあたって、面会交流を実施する方向での一事情とすることは未成年者らの福祉の観点からは相当とは言い難い。」
面会交流が子供にとって重要な権利であることは間違いないのですが、ここ10年ほどの裁判所は、DVなどが証明された場合以外は、面会交流せよとの判断がほとんどでした。
ところが、今回ご紹介する決定は、父母の紛争性が高いことを理由に面会交流を認めないとしており、最近の裁判例では珍しいものとなっています。
もしかすると、近年無理やり面会交流させていた弊害を、裁判所が認めるようになったのかもしれません。
ただ、本件の場合は、父親が母親に対して、嫌がらせとしかいえないような行為を次々と行っているケースなので、裁判所も面会交流は無理だと判断しましたが、たとえば婚姻費用の不払いがあるという一点だけで面会交流を認めないということにはならないでしょう。
また、本件では、母親が裁判所が命じた試行的面会交流を拒否したのも特長的です。
この点について、裁判所は、試行的面会交流を拒否したからといって、面会交流実施方向の事情とは考えないと言っています。
おそらく、父親側からの主張に対する判断なのでしょうが、これを一般化して、試行的面会交流なんて無視すればよいと思うのは危険だと思います。
裁判官も人間ですから、試行的面会交流をするように指示したにも関わらず拒否されたら、やはりマイナス方向に考えてしまうでしょう。
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