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弁護士が役に立ったと思う交渉術③-win-winの正しい思考法

交渉とは、相手と話し合うことにより現状より良い結果となることを目指すものです。

そして、よほど力関係に違いがあるような場合を除き、自分だけでなく、相手にもメリット(デメリットの回避を含む)がないと合意には達しません。

これをwin-winといいますが、この考え方はもう定着しているように思います。

では、win-winソリューションが上手く使えているかというと、使ってるつもりでも、かなりひとりよがりな提案になっていることが多いように思います。

ときには、win-winで提案したはずなのに、相手の反感を買ってしまったということもあるのではないでしょうか?

これは、交渉術の本にはwin-winを目指せと書いていながら、win-winの思考法まで書いていないことが原因です。

では、どのように考えれば良いのでしょうか?

ポイントは2つあると思います。

1 相手のwinを先に考える

win-winで考えているはずなのに相手の反感を買ってしまう根本的な原因は、人間は自分に都合良く事実を変容して認識してしまうことにあります。

つまり、自分の利益(win)を考えた後に、相手の利益(win)を考えると、全く悪気なく相手の利益になっていないことを相手の利益になっていると思い込んでしまうことがあるということです。

その結論を相手の反応を見ながら提案するならばまだしも、自信満々に「あなたのためですよ」などという態度で提案されたら、相手が怒るのも無理はないでしょう。

これを回避する方法は簡単です。

まず、先に相手の利益を考えれば良いのです。

先に

・相手に質的に新しい利益を加えられないか?

・相手に量的に今の利益以上の利益を与えられないか?

・現状のままだと相手に何か不利益が生じるか?その不利益を何らかの方法で回避できないか?

を考えます。

こうして思いついたことのうち、自分にも利益になることはないかを考えます。

これがwin-winソリューションの考え方の正しい順番です。

2 公平らしさ

もう一つ、win-winでやってしまいがちなことは、あなたのwinが相手のwinと比較して相対的に大きすぎるという誤りです。

人間というのは不思議なもので、フェアでないと考えると、たとえ自分の利益を放棄してでも、ときには不利益を受けてでも、あなたの利益にならないように行動します。

ですから、あなたのwinと相手のwinにあまりに大きな差がある場合は合意が成立しません。

そのような場合は、あなたの利益は大きいけれど、それなりにデメリットもあることなどを伝えたり、相手の利益は相手が考えている以上に良いものであることに気づかせる(説得するのではなく、あくまでもヒントを与えて相手が自分で大きなメリットに気づくように誘導する)、場合によっては、あなたが一部の利益を放棄することで、相手を尊重している態度を見せることも必要になってきます。

そんなことはあり得ないと思いますか?

このフェアであることの重要性については、行動経済学の有名な実験があります。

AさんとBさんの2人の前で、Aさんに100ドル渡します。

同時にAさんに、100ドルをBさんと分けるように言います。

ただし、BさんがAさんが提案する分割割合に同意しなかった場合は、100ドルは返さないといけません。

この場合、Bさんは、たとえ1ドルでももらえれば得をする訳ですから、Aさんの提案が0でない限りはAさんの提案を受け入れた方が良いということになります。

ところが、実験結果はそうではありませんでした。

Bさんへの分割割合が20ドル程度を下回るのを境にAからの提案を拒否する人が多くなったのです。

つまり、多くのひとは、多少は自分の利益を損なってもフェアであることの方を重視するということです。

なお、ここ数年アメリカで近江商人が注目されていて、win-win-winを目指そうなどといわれているそうです。

win-win-win=三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)ですね。

 

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