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裁判所が公表している婚姻費用算定表は、給与所得者の上限が2000万円(自営業者は1567万円)となっています。
では、義務者の年収が2000万円を超える場合はどうなるのでしょうか?
裁判例は、義務者の年収が2000万円を超える場合の婚姻費用について統一されていません。
裁判例を見ると、義務者の年収が2000万円を超える場合でも、少々超えるくらいの場合は、算定表の上限額で算定するという方法がとられることが多いようです。
養育費の場合は、2000万円を大きく超える場合でも、算定表の上限の金額とする裁判例が主流ですが、婚姻費用の場合には、2000万円を大きく超える場合、様々な考えが提示されています。
そのなかでも、おそらく、計算の基礎となる収入について修正して計算する方法が多数派なのではないかと思います。
以下、もう少し詳しく説明します。
婚姻費用算定表は、元となる標準算定式により算出される金額に若干幅を持たせて表にしたものです。
標準算定式については、コラム「婚姻費用の計算」の後半で説明しておりますが、簡単に説明すると以下の計算式で算出する方法です。
権利者に配分されるべき金額=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×(100+62×14歳以下の子供の人数+85×15歳以上の子供の人数)÷(100×2+62×14歳以下の子供の人数+85×15歳以上の子供の人数)
権利者に支払われる額=権利者に配分されるべき金額-権利者の基礎収入
ここで、上記に記載の基礎収入とは何かですが、総収入から職業費(仕事するための経費)、税金などの公的支払いのための費用、特別経費(医療費など生きていく上で最低限かかる費用)を差し引いたものをいいます。
収入が2000万円以下の場合は、政府統計をもとに総収入に一定の割合をかけて基礎収入を算定します。
しかし、2000万円を超える人が少数なため、十分な政府統計データがありません。
そこで、裁判所が具体的な事情から基礎収入を算出して、上記の標準算定式と同じ方法で婚姻費用を算出します。
この考え方の亜種として、各種経費だけでなく貯蓄率も考慮するという裁判例もあります。
もっとも、実際に具体的に基礎収入を算定しようとすると、家計の詳細な出費の情報が必要になりますが、高額所得者が収入の全てを一旦家計に入れて、お小遣いをもらっているということは稀で、使途が明確でない部分が多いのが通常です。
また、仮に一旦家計にお金を入れている場合でも、かなり詳細な家計簿をつけていなければ、具体的な使途が分からず、基礎収入が算定できません。
このように、実際には具体的に算出しようにも算出できないケースが多いので、私がこれまでもらった審判では、年収3000万円くらいまでは、「その他諸般の事情を総合考慮すれば、基礎収入割合は●●%とするのが相当である」として、統計上の基礎収入割合を若干下回る数値で、「だいたいこれくらいかな?」という数値を裁判官の感覚で決めている印象です。
ただ、さすがに年収5000万円の方のケースでは、通帳の取引履歴などから具体的に認定されました。
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