遺留分権利者に損害を加えることを知ってなした贈与とは?
民法第1030条は、遺留分減殺請求の対象となる財産について、被相続人死亡時の財産だけでなく、「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。」と定めています。
では、ここでいう「遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした」とはどういうことをいうのでしょうか?
この点については、争われた裁判例が多数あり、多少の言い回しの違いはありますが、おおむね以下のように判断しています。
まず、損害を加えることを知ってとは、損害を与えてやろうという目的までは必要なく、遺留分を侵害することを知っていれば良いとしています。
次に、遺留分権利者に損害を加えるかどうか知っていたかの判断にあたっては、当事者の法律の知識の有無を問わず、客観的に遺留分権利者に損害を加えることになる事実関係を知っていれば足りるとします。
そして、具体的にどの程度の事実関係を認識していればよいかについては、
・贈与財産の全財産に占める割合
・贈与の時期
・贈与者の年齢
・健康状態
・職業などから将来財産が増加する可能性が少なく、その贈与をなしたら遺留分を侵害するといえたか
から総合判断することになります。
要するに、財産関係は生きていれば変動するわけですから、誰も将来的に遺留分を侵害する程度の贈与か明確に予想はできません。
でも、贈与者が高齢だったり、重病だったりといった、ほぼ今後財産が増える見込みはないだろうといえる状況で、財産の大部分を贈与してしまったような場合には、遺留分の侵害が予想可能なので、元に戻しなさいということです。
なお、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたことについては、遺留分権利者が証明する責任を負います。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。