離婚時の企業年金の取扱い
離婚時の年金分割は、厚生年金、共済年金のみが対象であり、企業年金は対象になりません。
しかし、企業年金も財産分与として請求をすることが可能です。
以下、企業年金の内容ごとに説明します。
1 確定給付企業年金の財産分与
確定給付企業年金は、法律に基づいて設置されており、規約型と基金型というものがありますが、いずれも会社が掛け金を支出し、定年後に貰える給付金額が確定しています。
定年前に退職する場合でも、脱退一時金が支給されます。
このような性質から、確定給付型企業年金は、退職金と同様の性質があるものとみなされ、財産分与の対象になると判断されます。
具体的には、定年前の場合は、会社または運営法人に依頼し、仮に基準日に退職した場合に脱退一時金はいくらになるかを算定してもらい、その金額のうち婚姻期間分を財産分与として分けるということになります。
既に退職している場合で年金形式の場合は、総額いくらかの情報をもらい、そのうち婚姻期間分を半分に分けることになります。
なお、少数ではありますが、あくまでももらえるのは将来であって、離婚時点では支払義務者の手元にはないお金ですので、この点を考慮して減額するとの説があります。
2 確定拠出年金
確定拠出年金には企業型年金と個人型年金がありますが、いずれも法律に基づく制度です。
ただし、確定給付企業年金と異なり、支給額が運用実績によるので事前に金額は確定しません。
支給金額が不確定とはいえ、支払われるのは確実ですので、こちらも退職金と同様の性質のものとして財産分与の対象となります。
確定拠出年金を財産分与の対象とする場合には、運営管理機関に基準日時点の評価額を紹介し、その金額のうち婚姻期間分を財産分与の対象とします。
こちらも確定給付企業年金と同様に、実際の退職時より先にもらえることを考慮して減額すべきとする説がありますが、多くの裁判例では、そのような減額操作は行っていません。
3 個人年金
上記のような会社で入る年金とは異なり、保険会社などで販売する個人年金といわれる制度がありますが、こちらは単なる保険商品なので、基準日時点の解約返戻金を財産分与とすることになります。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。