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情報開示命令制度とは、婚姻費用、養育費、扶養料、財産分与等の審判、調停、訴訟で、裁判所が当事者に対して、判断に必要な情報の開示を命じることができるとする制度です(家事事件手続法、人事訴訟法)。
2026年4月1日から施行された制度で、これからは、相手が隠している財産が明らかになると期待を込めてご相談いただくことがあるのですが、実務上は変化がないように思います。
この説明の前提として、情報開示命令制度について説明します。
① 扶養関係事件
ⅰ 夫婦間の協力扶助に関する処分の調停・審判事件
ⅱ 婚姻費用の分担に関する処分の調停・審判事件
ⅲ 子の監護に要する費用の分担に関する処分の調停・審判・訴訟事件
ⅳ 扶養の程度又は方法についての決定及びその決定の変更又は取消しの審判事件
② 財産分与の調停・審判・訴訟事件
裁判所による情報の開示命令の対象となるのは、当事者のみです。
たとえば、相手方の収入が隠されている場合に、裁判所が開示を命じるのは相手方本人であって、職場に収入を明らかにするように命じることはできません。
たとえ第三者が持っている情報でも、本人が取得可能なものであれば、本人に対して開示するよう命令することが可能です。
具体的には、課税証明書は、市区町村役場が発行するものですが、本人が取得できるため、本人に対して提出を命じることができます。
問題は、情報そのものが第三者のプライバシーや経営上の秘密にかかわる場合です。
例えば、養育費の算定にあたり、再婚相手の収入資料が必要な場合、本人に対して、再婚相手の収入資料の提出を命じることができますが、養育費算定に関係ない部分(勤務先名など)はマスキングして提出することは認められます。
およそ事件解決のために必要な情報はすべて対象になりますし、紙やデータとしてなくても、たとえば勤務先の情報なども開示命令の対象となります。
また、具体的に特定することは、必ずしも必要ではありません。
例えば、「●●銀行●●支店の預金口座」と特定した開示請求はもちろん、「基準時に存在する預金口座」といった、包括的な開示請求も可能です。
ただし、包括的な請求であればあるほど、情報開示命令の必要性があるかどうかについての判断が厳しくなります。
以下、事件類型別に対象になりやすいものを記載します。
① 婚姻費用や養育費等の事件
・源泉徴収票
・確定申告書
・課税証明書
・年金振込通知書
・給与(賞与)明細書
・経営している会社の決算書
など
② 財産分与の事件
・預金口座の通帳又は取引履歴
・証券会社の残高明細
・不動産登記簿
など
当事者の申立て、又は、職権により、必要があると認めるときに裁判所が情報の開示を命じることが可能です。
条文上は、裁判所が職権で命じる場合もあるかのような記載ですが、実際には当事者が書面で裁判所に命令を発するように求め、裁判所が判断するのが通常です。
一方当事者の情報開示命令の申し立てに対し、相手方の反論の機会は法律上は定められていませんが、実際には、命令を発する必要性の判断のために裁判官から意見を求められるため、そこで反論は可能です。
情報開示命令が認められるのは、「必要があると認めるとき」に限りますが、必要性については以下の事情が考慮されます。
当然ですが、開示命令が認められるのは、その事件の解決に必要な情報に限ります。
養育費の請求であれば、収入が分かる資料は必須ですが、例えば、課税証明書が提出されている場合にも関わらず、源泉徴収票の開示を求める申し立てをしても、必要性がないので認められません。
財産分与事件において、相手が預金を隠しているという主張がされることがありますが、何も隠していないという回答がされるのが通常です。
そのような場合に開示命令を認めてもらうには、相手が同居中に●●銀行を利用していたといえれば、その銀行の取引履歴の開示を命じられる場合がありますが、近隣の金融機関すべての開示を求めても、そもそも預金口座があるのかどうか分からないので、開示命令は認められないということになります。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、当事者に対し、その収入及び資産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる。
開示義務者のところでも少し書きましたが、情報を開示しなければならない義務者は当事者なので、開示命令が認められるのは、その当事者が入手可能な資料に限られます。
扶養や財産分与などの家事事件では、当事者が任意に資料を提出するのが原則なので、命令を出す前に、まずは任意に提出するように当事者に促すことになります。
それでも提出しない場合は、調査嘱託(裁判所が関係機関に問い合わせる)を検討し、調査嘱託で回答が得られそうにない場合は、情報開示命令を発する、という順番になります。
もっとも、調査嘱託は必須ではなく、訴訟の状況に応じて裁判官が調査嘱託にするのか、情報開示命令を出すのかを判断することになります。
情報開示命令の実効性があることも情報開示命令を出すかどうかの判断基準となる、と裁判官論文には書いてあります。
その同じ論文に「情報開示命令を発しても提出の見込みがなく実効性が乏しいことのみを理由とし、必要性がないと判断することは、情報開示命令の制度が新設された趣旨に照らして、相当でないと考えられる。」と書いてあります。
相手が開示を断固拒否している場合に、開示命令を出すのか出さないのか、どっちやねん!という、よく分からない書き方です。
私としては、相手が資料を隠している場合に必要な制度なので、相手が情報を隠して、命令を出しても開示しない可能性が高いから命令は出さないというのは本末転倒なので、この要件はおかしいのではないかと考えていますが、実際の運用がどうなるのか注視したいところです。
情報開示を命じられた当事者は、原則として書面で命令内容に従った回答をすることになります。
開示命令に納得がいかなくても、開示命令について単独で不服申し立てをする手続きはありません。
命令が出されたにもかかわらず、開示義務者が従わない場合は、開示命令に従わなかったという事実をもって、義務者に不利に判断されることがあります。
また、裁判所は、正当な理由なくその情報を開示せず、又は虚偽の情報を開示したときは、家庭裁判所は、10万円以下の過料に処することができます。
情報開示命令制度の概要は上記のとおりですが、情報開示命令の対象が当事者に限られるため、財産や収入資料が開示されるかどうかは、結局は当事者次第となります。
一応ペナルティはありますが、財産や収入を隠そうとするのは、それが高額だからであって、その高額な財産や収入の情報を出すくらいなら、10万円の過料を払った方がましだと考える人は多いと思います。
そうすると、この制度にどこまで実効性があるのか疑問です。
また、開示に応じないことをもって義務者に不利な認定ができるとはいっても、たとえば、婚姻費用を請求した事案で、相手が収入資料を出さないからといって、年収1億円という主張が認められることはないでしょう。
実際には、平均賃金や日々の暮らしぶりから、「大体これくらい」という認定がされるでしょうから、収入は多いのに派手な暮らしはしていない場合は、実態より相当低い年収認定となるでしょう。
つまり、隠した方が得ということになります。
なお、金融機関や勤務先が持っている情報は、金融機関や勤務先への調査嘱託を申し立てればいいので、当事者に情報開示を命じる意味がありません。
私としては、こんな制度を作るより、裁判所から税務署への照会を認め、税務署が回答義務を負うような法改正をした方が、収入や財産が明らかになり、かつ、判決が出ても支払わない場合に差し押さえがしやすくなって良いのではないかと考えますが、役所間の力関係で無理なんだろうな、、、
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