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弁護士が役に立ったと思う交渉術②-質問する-

交渉を有利にまとめようとするあまり、自分の主張ばかりを力強く主張する方がいます。

ときには相手の話しを中断してまで話し始める方がいます。

しかし、圧倒的な力関係があれば別ですが、通常はいくら自分の主張を力強く言っても交渉が有利になることはありません

交渉のときに自分が話す以上に重要なのが、相手の話を聞くことです。

そして、そのためには質問をすることが重要となります。

では、交渉における質問はどういう意味があるのか、私が重要と思う交渉の中での質問について説明します。

1 コミュニケーションとしての質問

交渉において、相手に信用してもらうということは非常に重要な要素です。

相手の人間性を全面的に信頼する必要まではありませんが、少なくとも「約束をすれば守ってくれる」というレベルで信頼関係を築くことが重要です。

このための質問としては、大きく分けて2つあるのではないかと考えます。

①会話のきっかけとしての質問

相手の趣味を聞くなど、とりあえずの会話のきっかけとしての質問というものがあります。

お見合いの席などでありそうですが、そのような場でなくとも、共通する話題が見つかれば人は親近感がわき、信頼へとつながるものです。

時として、どうでも良さそうな会話が解決につながることもあります。

離婚調停などで、調停委員に趣味を聞くわけにはいきませんが、普段の交渉であれば、相手にたわいのない質問をしてみるのも良いでしょう。

②相手の回答や提案を繰り返すことで、相手の話を聞いているという意思を伝える質問

会話をしていて一番不愉快になるのは、せっかく話したことを相手が聞いていなかったということです。

そこで、ちゃんと聞いてますよというアピールのために、相手の話の内容を繰り返すように質問してみる方法があります。

たとえば、相手が「この件は100万円でどうですか?」といったとします。

これに対して、良い・悪いではなく、「100万円ですか?」と確認するような半疑問文で応じる場合がこれに当たります。

ただし、これはやりすぎるとうっとおしく感じるので、ほどほどにする必要があります。

なお、交渉テクニックのひとつとして、あえて理解できないふりをするという方法もありますが、上手く使わないとすぐに交渉決裂となりかねないテクニックですから気をつけてください。

2 情報を得るための質問

質問と言ったときに最もイメージしやすいであろう質問の目的は、この相手から情報を引き出すための質問です。

交渉をするに当たって、相手の要望・目的が分からないのではどうしようもありません。

この、情報を得るための質問は、最初は、なるべくオープンクエスチョンが望ましいです。

オープンクエスチョンとは、why、what、howなどの、回答の自由度が高い質問です。

こうすることで、相手から様々な情報を得ることができます。

ただし、オープンクエスチョンは、多用すると不快感を与える可能性があります。

とくに「なぜ?」「どうして?」といった理由をたずねるのは多用しない方が良いです。

なぜなら、人間の行動はそれほど合理的なものではないため、どんどん追求されると、いつか答えられなくなります。

それなのに、「なぜ?」「どうして?」を繰り返すと、相手は責められていると感じてしまいます。

ちなみに、警察・検察の取り調べでは「なぜ?」が多用されます。

また、あからさまに探りを入れられると不快感をもってしまいますので質問の内容やタイミングにも気をつける必要があります。

さて、このような、相手から情報を得るための質問ですが、相手が回答を渋る場合があります。

そのような場合の対応は2つ

①その質問をやめる

②質問する理由を説明してもう一度たずねる

相手がいやがっていることを無理やり聞き出しても、相手が不快感をもつだけです。

その質問が、どうしても必要な質問でなければ、引き下がった方が良いでしょう。

とくに「答えられないのは、やましいことがあるからでしょ」と言ってしまうと、交渉は決裂すると思って良いでしょう。

どうしても必要な質問であれば、なぜそんな質問をするのか説明してから、もう一度聞いてみましょう。

3 自分が開示する情報をコントロールするための質問

交渉において、相手に必要以上に自分の情報が伝わってしまうと不利になることがあります。

正しい情報ならまだいいですが、相手に誤ったマイナス情報が伝わってしまうとやっかいです。

また、ときには「何を考えているのか分からない」というのは強い武器になることもあります。

そのために、自分が開示する情報をコントロールすることが重要になります。

では、どうやって情報をコントロールするかというと、相手の主張や質問を具体的にする質問をするのが簡単な方法です。

こういう質問をすることで、相手が聞きたいことを明確にし、誤解が生じにくくするとともに、相手の望んでいることさえ答えれば良いので、不用意に自分に不利な情報を言ってしまう可能性も低くできます。

たとえば、離婚調停において、調停委員が「申立人は、あなたの暴言が離婚原因だと言ってます」と言われたときに、「暴言とは具体的にどんなことですか?」とか、「それはいつ頃のことを言ってるんですか?」と言った質問をすることが、相手の質問を具体的にする質問です。

これは同時に1②で書いた、相手の話を聞いているとアピールする質問の効果も持ちます。

4 意見を受け入れやすくするための質問

話しの流れから、結論が分かっていても質問をする場合があります。

人間は自分の口から言った方が、その結論を受け入れやすく、約束を守る傾向があります。

ですから、最終的な結論を相手に言わせるための質問をします。

ただし、これもやり過ぎると「誘導されている」と思われてしまうため頻繁に使ってはいけません。

なかなか相手が言ってくれない場合には、あなたが結論を出し、その後で「一緒に確認しましょう」と言って、相手に合意内容を言わせる方法でもかまいません。

5 相手をピン留めするための質問

弁護士が証人尋問でよくやる方法です。

Cという回答を得たいけれども、Cですかと質問すると否定しそうなので、A、B、D、Eと答えさせて、「じゃあ間に入るのはCですよね」とやる方法です。

これは事前準備をしないでできる方は少ないのではないかと思います。

しかも、失敗するとかなり間抜けなことになります。

「Aですよね、Bですよね、じゃあCですよね」とたたみかけたのに、「いやDの可能性もあるんじゃないですか」とか、「そもそもAという前提が違うんじゃないですか」と反論される場面を見ることがあります。

似たようなものに、誘導する質問もあります。

この方法については、訪問販売員の方が詳しいかもしれません。

たとえば、

販売員:最近地球温暖化といわれてますけど、大きな問題ですよね

客:そうですね

販売員:やっぱり、電化製品もエコな方が良いですよね

客:そうですね

販売員:当社の製品は一般的な製品より30%電気代を節約できます。皆さんが電気代を30%節約すると、火力発電所●機分が不要となり、二酸化炭素排出量が・・・、とってもエコなんです。

といった具合に話しをするものです。

こちらは、完全にピン留めできるわけではありませんが、人間は、自分が先に行ったことと矛盾した回答をするのは嫌うので、なんとなく不満に思いつつも相手の要求に応じてしまうというものです(一貫性の原則)。

 

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