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「相手に訴えられたけれど、全く身に覚えがない。裁判で勝ったけれど、それだけでは納得いかない」そんな方もいらっしゃると思います。
多くの場合は、たとえ裁判で負けても、負けた側が違法に裁判をしたと言われることはありませんが、悪質な場合には、裁判をすること自体が違法とされることがあります。
このことについて判断したものとして、最高裁判所昭和63年1月26日判決というものがあるので照会します。
民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。 けだし、訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法律的根拠につき、高度の調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである。
*「けだし」は、理由を述べるときに使う接続詞。≒「なぜなら」
上記の通り、全く根拠なく、かつ、訴える側も根拠がないと知っているか容易に知り得た場合のみ、裁判を起こすことが違法となります。
ここで、根拠がないとは、「証拠がない」という意味ではなく、「そんな事実はなかった」という意味です。
ですから、普通は、「自分には権利がある」と思って裁判を起こすので、裁判を起こすこと自体が違法となることはありません。