慰謝料請求,財産分与などの離婚問題,遺産分割,遺留分減殺請求などの相続問題は「なごみ法律事務所」

受付時間:平日10:00~20:00

裁判上の主張が名誉毀損となる場合

裁判を行っていると、全く関係のない侮辱的な主張や、関連性はあるけれども、ちょっとひどくないかと思う主張がなされることがあります。

多くの場合は、当事者も必死に相手の信用性を下げようとしているだけで、やむを得ないのですが、場合によっては違法となる場合があります。

このことについて判断したものとして、東京地方裁判所平成18年3月20日判決と、水戸地方裁判所平成13年9月26日判決というものがあるので紹介します。

【東京地方裁判所平成18年3月20日判決】

〈訴訟上の主張についての一般論〉
相手方当事者の悪性を強調するなどの方法により相手方の主張,供述の信用性を弾劾したり,相手方に不名誉な事実関係をあえて間接事実や補助事実として主張したりする主張立証活動は,事実関係に争いのある全ての民事訴訟において,その必要性を一概に否定することはできない。

しかしながら,訴訟当事者は,紛争における対立当事者であり,相手方に対する悪感情を抱いていることが珍しくなく,そのために,訴訟における主張,立証活動に名を借りて,相手方に不愉快な思いをさせて心理的打撃を与えることのみを主たる動機として相手方の名誉を傷つける事実関係の主張をし,またそのような事実関係を供述することも,ままみられるところである。

〈主張する側の利益に関する言及〉
訴訟上の主張,立証活動を,名誉毀損,侮辱に当たるとして損害賠償を認めることについては,相手方の悪性主張のための正当な訴訟活動を萎縮させて民事訴訟の本来果たすべき機能を阻害することもあるから,慎重でなければならない。

〈主張される側の利益に関する言及〉
他方,訴訟の当事者が相手方の悪性立証に名を借りた個人攻撃に野放図にさらされ,訴訟以外の場面においては名誉毀損行為として刑罰や損害賠償の対象となる行為にも訴訟の場面においては相手方の動機いかんに関わらず耐えなければならないという状態が恒常化することも,相手方当事者からの不当な個人攻撃をおそれる者が訴訟の提起や正当な応訴,防御活動に消極的になり,ひいては民事訴訟の本来の機能を阻害するおそれがあることにも留意しなければならない。

〈判断基準〉
結局,両者のバランスをとって,民事訴訟の本来の機能を阻害しないように留意しながら判断していくほかないが,主要な動機が訴訟とは別の相手方に対する個人攻撃とみられ,相手方当事者からの中止の警告を受けてもなお訴訟における主張立証に名を借りて個人攻撃を続ける場合には,訴訟上の主張立証であることを理由とする違法性阻却は認められない。

 

【水戸地方裁判所平成13年9月26日判決】

訴訟における主張立証行為は、その中に、相手方やその代理人の名誉を毀損するような行為があったとしても、それが訴訟における正当な弁論活動と認められる限り、違法性を阻却するものと解すべきであり、当初から相手方当事者の名誉を侵害し、又は相手方当事者を侮辱する意図で、ことさら虚偽の事実又は当該事件と何ら関連性のない事実を主張する場合や、あるいはそのような意図がなくとも、相応の根拠もないままに、訴訟追行上の必要性を超えて、著しく不適切な表現で主張し、相手方の名誉を害し、又は相手方当事者を侮辱する場合などは社会的に許容される範囲を逸脱したものとして違法性を阻却されないというべきである。

【コメント】

上記2つの裁判例から分かるように、裁判上の主張が名誉毀損などの違法行為に当たるかについて、詳細な基準を設けることは難しく、具体的な事情に応じて裁判上の主張に名を借りた違法な主張かどうか判断せざるを得ません。

そうすると、後から違法だといわれるのが怖くて主張できないと思われるかもしれませんが、裁判上の主張が名誉毀損などの違法行為にあたると主張された裁判のうち、ほとんどの裁判では、「違法ではない」とされています。

問題となっている点について、普通に裁判をしている限りは違法となることはないのでご安心ください。

お問い合わせ

東京都内をはじめ、千葉や神奈川、埼玉のほか、遠方の裁判所でも対応可能です。
お気軽にお問い合わせください。