法務省は本気で無戸籍児問題に取り組む気があるのだろうか?
最近になり無戸籍児問題が注目されるようになり、法務省も無戸籍児問題に関するHPやポスターを作るなど積極的に取り組んでいます。
見えないところでも、たとえば、無戸籍児でも行政サービスが受けられるように通達を出すなどしており、このような通達のため市区町村役場の窓口でもスムーズに手続きが進むようになっております。
このように法務省の民事局民事一課戸籍係は無戸籍児問題に積極的に取り組んでいるように見えるのですが、では法務省自体が本気で無戸籍児問題に取り組む気があるのかは疑問です。
たとえば、元夫が刑務所に入っている場合、懐胎時期(妊娠したであろう時期)に刑務所にいることが証明できれば、嫡出推定(夫の子であるとの推定)が及ばないので、生まれてくる子は遺伝学上の父親に認知調停を申立てたり、親子関係不存在確認調停(訴訟)を申立てることで、元夫の子として戸籍に載ることを回避できます。
そこで、私は弁護士会照会という制度を使って、法務省矯正局成人矯正課に対し、子供を懐胎した時期に元夫が刑務所にいたことを証明して欲しい旨要請しました。
ところが、法務省矯正局成人矯正課の回答は、懐胎時期に在監していたことの証明はしない、現在刑務所に入っているかどうか、何処の刑務所に入っているかは回答するとのことでした。
理由は、在監者(刑務所に入っている人)のプライバシーへの配慮だそうです。
今入っている刑務所を回答することはプラバシー侵害にならず、懐胎時期に刑務所にいたかどうかを回答するのはプライバシー侵害になるというのはいったいどういうことでしょうか?
私には、全く理解できません。
上記のようにプライバシー侵害の程度は、現在の刑務所を教えるのと同程度か、むしろ刑務所に入っていたかどうかだけを答えればよい分少ないはずだと主張すると、他に代替手段があるからだとも回答がありました。
これに対し、私が「代替手段とは何ですか?」と質問すると、現在いる刑務所が分かるのだから、その刑務所に手紙を出すなどして本人に懐胎時期に刑務所にいたかどうかを問い合わせれば良いとのことです。
思わず「できるわけないでしょ!」と言ってしまいました。
どうも無戸籍児問題、300日問題というものについて法務省で共通認識はないようです。
すべてではありませんが無戸籍児問題の多くは、元夫に他の男性の子供を妊娠したことが怖くて言えないことから発生します。
いわゆる不倫の末の妊娠という場合もありますが(それとて子供の責任ではない)、夫のDVなどから逃げたのはいいけれど、怖くて離婚手続きがとれないというケースも多くあります。
そんな女性が、刑務所にいる元夫に
「私妊娠してるの♡もちろん父親はあなたじゃないわ♡でも法律上はそうはいかないから、あなたはずっと刑務所にいたって書類にサインしてね♡」
なんて言えるとでも思っているのでしょうか?
法務省には、ぜひ、この全く意味のない在監者のプライバシー保護の方針をあらためていただきたいものです。
なごみ法律事務所
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弁護士 本 田 幸 則
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。