年金収入・失業保険受給中の婚姻費用
婚姻費用を請求したいけれども、相手には年金収入または失業保険の給付金しかないという場合もあると思います。
そのような場合でも婚姻費用は請求できます。
ただし、年金収入・失業保険受給中の場合は、婚姻費用算定表とは違った金額になる可能性があります。
なぜなら、婚姻費用算定表は、職業費(スーツ代など、仕事に関する費用)を考慮して作られているところ、年金受給者や失業保険給付金受給者は、職業費を考慮する必要がないからです。
その結果、婚姻費用算定表よりも、やや高い婚姻費用とされます。
具体的な計算方法は、コラム「婚姻費用の計算」の「①世帯の基礎収入を計算する」欄の%表示の部分に20%を加えた割合で計算することになります。
同コラムと重複するので、以下、簡単な説明にとどめます。
1 婚姻費用算定表を使う
上記のとおり、年金収入や失業保険受給の場合、給与所得者の収入と20%の差があります。
ですから、年金収入・失業保険受給金額を0.8で割れば、給与所得者に換算した場合の年収が算出できます。
たとえば、年金額が年300万円の場合、300万円÷0.8=375万円となるので、婚姻費用算定表の給与所得者の375万円のところを見ればよいと言うことになります。
2 標準算定式を使う
①世帯の基礎収入を計算する
義務者の実際の収入に次の割合をかけて算出します。
0~25万円 | 62% |
25~75万円 | 61% |
75~175万円 | 60% |
175~300万円 | 59% |
300~400万円 | 58% |
400~500万円 | 57% |
500~725万円 | 56% |
725~975万円 | 55% |
975~2000万円 | 54% |
例えば、年金収入が300万円の場合、
基礎収入=300万円×59%
=177万円
となります。
権利者の基礎収入については、コラム「婚姻費用の計算」をご覧いただくか、給与所得者であれば、上記の割合から20%を引いてください。
②権利者に配分されるべき額を計算する
次の計算式で計算します。
権利者に配分されるべき金額=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×(100+55×14歳以下の子供の人数+90×15歳以上の子供の人数)÷(100×2+55×14歳以下の子供の人数+90×15歳以上の子供の人数)
③義務者が支払う額を計算する
次の計算式で計算します。
義務者が支払う金額=②権利者に配分されるべき金額-義務者の基礎収入
ここで算出される金額は年間の金額ですから、月額は12で割って計算することになります。
ここで算出される婚姻費用は年間の婚姻費用ですので、月々の婚姻費用は12で割った金額となります。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。