家の価格より住宅ローンの残額の方が多い場合の財産分与

2017-09-01

財産分与は、離婚時(別居が先行する場合は別居時)にある財産を分けようという制度ですから、原則として自宅の現在の価格より住宅ローンの残額の方が多い場合は、分けるべき財産がないということになります。

 

ところで、頭金が一方の特有財産(独身時代に貯金や親の援助)から出された場合はどうすればいいのでしょうか?

 

この場合でも、財産分与はゼロとなります。

 

なぜなら、いくら頭金を出そうとも、その不動産の価値が実質ゼロだからです。

 

この場合の、頭金は投資をしたようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。

ある会社が成功しそうだということで株を買います。

その会社の事業がうまくいった場合は、その株式を売って売却益を得たりすることができますが、投資先が破産した場合はいくら投資しても1円も帰ってきません。

これと同じで、自宅の価格が上がれば、最初に投入した頭金以上のお金が戻りますが、自宅の価格よりローンが多い=借金まみれの会社の場合、投資家には1円も返ってきません。

 

しかし、お金は返ってこなくても、現に不動産は存在するのですから、その一部は自分のものだと主張できないでしょうか?

 

この点、東京地方裁判所平成24年12月27日判決は、不動産について共有持ち分があるという形で権利を認めました。

 

同裁判例は、現実に起こった問題ですから、数字が中途半端で計算が分かりにくくなるので、計算しやすいように以下の事例で考えてみましょう。

 

・自宅購入時価格5000万円

・頭金1000万円を妻の独身時代の貯金から支出

・4000万円を夫名義のローン

・自宅購入から5年後に離婚

・現在の自宅価格3000万円

・残ローン3500万円

 

このようなケースでは、自宅購入価格5000万円のうち1000万円を妻の特有財産から出しているので、家の5分の1は妻のものといえます。

また、残り4000万円のうち、500万円を夫婦である間に返した=250万円分は妻が返したと評価できます。

そうすると250/5000=1/20も妻のものといえます。

先の5分の1とあわせて、この家のうち妻が5/20=1/4は妻のものといえます。

ですから、この不動産は、4分の3は夫のもの、4分の1は妻のものです。

 

さて、理論上はそうだとして、それを主張することに意味があるのでしょうか?

 

妻が4分の1は自分のものだから、自分の権利を登記しろと言っても、実際にそれをやったら金融機関が名義変更に同意せず、抵当権を実行するでしょう。

そうすると、自宅の時価額よりローン残高の方が高いので、銀行の抵当権が実行されると、自宅の売却代金は全て銀行に入り、妻の手元には1円も入ってきません。

 

結局、これをやる意味があるケースは2つだけではないかと思います。

 

①その家に住み続けたいので共有者として自宅の利用権を主張(上記の裁判例のケース)。

もちろん、その場合は元夫に家賃相場の3/4程度の家賃を払う必要が出てきます。

 

②何十年か後に住宅ローンが返せるだろうから、その時に少しでも取り返せればいいやと思って主張する。

もちろん、元夫と何十年後かに交渉する必要がありますが、そんなことをしたい人はあまりいないのではないでしょうか。

 

以上のしだいで、上記の権利を主張する意味があるケースは少ないので、裁判例も上記のもの程度しかありません。

 

 

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弁護士 本 田 幸 則
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