別居中の児童手当は、実際に子供を監護している親のものです

2017-10-15

児童手当は、収入の多い方の親の口座に振り込まれますが、それが別居時に子供を監護する方の親の口座ではないことがあります。

多いのは、夫の口座が振込口座となっており、妻が子供を連れて出て行ったというケースです。

 

このようなケースでは、別居後速やかに市区町村役場で別居していることを証明する書類を提出し、振り込み口座を変えてもらうことになりますが、行政手続きの関係で別居後もしばらくの間夫の口座に児童手当が振り込まれるということがあります。

 

その場合、夫に児童手当を支払うよう要求すれば、ほとんどのケースで支払いをしてくれるのですが、過去に1例だけ相手に弁護士がついているにも関わらず、「支払わない」と争われてしまった経験があります。

 

1 児童手当は、別居中はどちらの親がもらう権利があるのでしょうか?

 

この点については、児童手当法4条に明確に定めがあります。

 

児童手当法4条

1 児童手当は、次の各号のいずれかに該当する者に支給する。

①  次のイ又はロに掲げる児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母であつて、日本国内に住所(未成年後見人が法人である場合にあつては、主たる事務所の所在地とする。)を有するもの

②以下略

2 前項第一号の場合において、児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその未成年後見人が数人あるときは、当該児童は、当該未成年後見人のうちいずれか当該児童の生計を維持する程度の高い者によつて監護され、かつ、これと生計を同じくするものとみなす。

3 第一項第一号又は第二号の場合において、父及び母、未成年後見人並びに父母指定者のうちいずれか二以上の者が当該父及び母の子である児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするときは、当該児童は、当該父若しくは母、未成年後見人又は父母指定者のうちいずれか当該児童の生計を維持する程度の高い者によつて監護され、かつ、これと生計を同じくするものとみなす。

4 前二項の規定にかかわらず、児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父若しくは母、未成年後見人又は父母指定者のうちいずれか一の者が当該児童と同居している場合は、当該児童は、当該同居している父若しくは母、未成年後見人又は父母指定者によつて監護され、かつ、これと生計を同じくするものとみなす。

 

長々と書いてありますが、同居している方の親に払いますよということが書いてあります。

 

法律に明確に書いてあるので、実際に監護していないほうの親が「支払わない」と言っても勝ち目はありません。

ですから、児童手当に関して争われるケースは極めてまれです。

 

2 争われた場合にどうやって請求する?

 

上記のとおり争われること自体がマレなケースなので、裁判例も私が知る限り1例しかありません。

 

その裁判例では、妻は、財産分与の一部として児童手当を支払うよう要求しました。

 

これに対する裁判所の判決は、児童手当は、児童手当法に基づいて監護親に支払われるものであって、夫婦共有財産を分けるという財産分与とは性質を異にするという理由で、財産分与として児童手当を請求することはできないとしました。

 

そうすると、児童手当法に基づいて監護親に支払われるべきものについて、本来受け取る権利のない非監護親が受け取っているということになるので、財産分与ではなく不当利得返還請求権(民法703条)を行使すべきということになります。

 

当然、不当利得返還請求は、離婚そのものとは関連がないので、離婚とは別途訴訟を起こすことになります。

 

以上のしだいで、争われた場合は100%勝てますが、手続きがかなり面倒です。

個人的には、財産分与は「一切の事情を考慮して」決めるわけですから、「児童手当の返還」という構成は無理でも、「夫は児童手当相当額の利益を妻の損失の下で受けているのであるから、それを考慮した金額とする」ということができないものかと思います(そうすると、およそ何でも離婚手続きで解決することになりかねませんが・・・)。

 

3 児童手当は婚姻費用・養育費を決める際の収入にあたるか?

 

この点については、収入として考慮されません。

 

なぜなら、児童手当は国が政策的な判断で、子育てを援助しているもので、本人の能力に関係なく政策的判断で増減、あるいは廃止されるものだからです。

 

 

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弁護士 本 田 幸 則
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