300日問題-元夫に知られずに出生届を出したい-

元夫に知られずに戸籍が取得できる可能性があります!

離婚成立から間もなく子供が生まれたけれども、子供の父親は元夫ではない。

このような場合の対応として、民法の一般的な解説書には、2つの方法しか書いていません。
① 前夫が子または母親に対して嫡出否認の訴えを起こす(民法775条)
② 前夫を相手として親子関係不存在確認調停を申し立てる

しかし、一般的な解説書には載っておらず、多くの弁護士が知らない方法があります。
③ 遺伝学上の父親を相手として認知請求をする
という方法です。

この③遺伝学的な父親を相手とした認知請求が認められると、この判断と矛盾することになる元夫との親子関係が否定され、結果として子供は遺伝学的な父親の子として戸籍に掲載され、元夫の戸籍に載ることはありません。

もっとも、あらゆる場合に認められる方法ではありません。

 

遺伝学上の父親を相手として認知請求をすることが出来る場合

遺伝学的な父親を相手として認知請求をすることが出来るのは、子供が嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)を受けない場合です。

嫡出推定を受けない場合とはどういう場合をいうかについて、最高裁判所は、夫婦の性生活がなかったことが、外観上明らかな場合としています。
具体的には、夫の失踪、海外滞在中、刑務所に収監中などが挙げられますが、これらにかぎられるわけではありません。

では、どの程度の事実で嫡出推定が及ばないことになるのかというと、具体的な事情から個別に判断するしかありません。

たとえば、離婚届けを出すより相当前から別居して、一切連絡をしていなかったり、離婚調停や裁判をしているような場合には、遺伝学的父親に対する認知請求調停をすることができる可能性があります。

逆に、嫡出推定が及ばないことについての証明が不十分なのに、この手続きをした場合、事実を確認するために裁判所が元夫に連絡をして事情を聞くことがあります。

 

裁判所の受付で、「そのような請求はできません」と言われることがあります

この遺伝学的父親に対する認知請求という方法については、最高裁判所のHPや法務省のHPで一言触れている程度で、詳しく解説した書籍はほとんどありません。

そのため、この方法を知っている弁護士は少なく、裁判所でも周知されておりません。
事実、私が、裁判所に遺伝学的父親に対する認知請求を申し立てた時も、裁判所職員から、そのような申し立ては認められないので取り下げるよう言われました。

このような状況のため、弁護士や裁判所窓口で相談したけれども、元夫を関与させずに戸籍を取得する方法はないと説明を受ける可能性があります。 ですから、よほど親子関係の手続きに詳しい裁判所の担当者に当たらないかぎり、まず、受け付けてもらえるよう裁判所を説得することが必要になります。

そのためにも、ぜひ、この手続きの経験があるなごみ法律事務所にご相談ください。

*HP作成時は上記のような状況でしたが、平成27年7月現在、裁判所のHPや法務省のHPで遺伝学上の父親を相手に認知請求をする方法が解説されるなど、この手続が知られるようになってきました。
ただし、先日も某裁判所で、「なぜ普通に役所に認知届けをしないんですか?」と聞かれましたので、まだまだマイナーな手続だと思います。
詳しくは、300日問題での認知調停の現状もご覧ください。

 

戸籍がなくても受けられる行政サービスがあります

お子さんの出生届けを出していない場合でも、児童手当や、保育所の入所、母子保健等の児童福祉行政上のサービスが受けられる場合がありますので、市町村窓口で手続きを行ってください。
法務省の無戸籍児に関するサイトでも説明があります。

*早産によって300日以内に出産した場合は、産院で「懐胎時期の証明書」を書いてもらえば、上記のような手続をしなくても遺伝学上の父親の子として届け出ることが可能です。

  *最近相談を受けた案件で、区役所窓口で住民票または仮の住民票がないと国民健康保険に加入できないと説明を受けた方がいらっしゃいましたが、間違いです。

国民健康保険への加入に住民票も仮の住民票も必要ありません。

このことは、厚生労働省の通知で明記されていますので、もし市区町村役場の窓口でそのように説明を受けたら、リンク先を示してください。

なお、社会保険の場合は、管理する団体によって異なり、仮の住民票を提出するように言われる場合があります。その場合は、裁判所に認知調停を申立てたことを証明する書類(係属証明書)を持って市区町村役場に行き、仮の住民票を作ってもらう必要があります。

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